大津市で2019年、散歩中の園児ら16人が死傷した事故で、重傷を負った女児(7)の父親(35)が4日、報道陣の取材にオンラインで応じた。8日で事故から4年がたつが、危険な運転や悲惨な交通事故は後を絶たず、むなしく感じることもあるという。「自分が声を上げることで、一つでも事故を防げれば」と、切実な願いを語った。
5月初旬は、「この頃だったな、と必ず思い返す時期」。当時は経験のないことが一気に押し寄せてきて、毎日が長く感じられたという。
女児は事故で左脚や骨盤を折り、約2カ月半入院した。今年小学校に入学し、後遺症の心配もほぼなくなった。16歳までは年に1度の検診が必要だという。
冬の間には運動中に脚の痛みを訴え、しゃがみ込むことがあった。事故の詳細な記憶こそないものの、「めちゃくちゃ痛かった」と話すことがあるという。
「自分は遺族ではないし、被害者の代表と言うわけでもない」と前置きした上で、昨年に続いて報道陣の取材に応じた理由を語った。もし遺族が何年後かに前面に立つことがあった時の道筋を作っておきたいという。「誰かが前に立っている状況を作っておけば、いつか報われることがあるかもしれない」
事故は大きく報道されたが、4年間で交通ルールが守られるようになったとは感じられない。横断歩道で歩行者がいても減速すらしない車が続き、園児を連れた保育士が渡れずに困っている場面を目にした。強引に交差点を曲がったり、赤信号で進入したりする危険な運転も毎日何回も見かける。「自分の身に降りかからないと何も感じてもらえないのかな」。世間の交通安全意識の低さを嘆く。
「交通事故はいつ起きるか分からない。一瞬の不注意や判断ミスが悲惨な事故につながる。今から自分の運転を見直してほしい」。被害者の親として発信を続けることで、一人でも多くの命が助かってほしいと望んでいる。
≪大津園児死傷事故≫
2019年5月8日午前10時15分ごろ、大津市大萱6丁目の丁字路で、右折車と衝突した直進車が歩道にいた散歩中の園児らをはね、園児2人=ともに当時(2)=が死亡、園児11人と保育士3人が重軽傷を負った。
右折車の女性(56)は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)などの罪で20年2月に禁錮4年6月の実刑判決を受け、確定。直進車の女性(66)は19年6月に不起訴処分となり、大津検察審査会は21年12月に不起訴相当と判断した。