【SNS特報班】子育て予算5年で1.4倍 九州7県全233市町村

 子育て支援にかける市町村の予算が大幅な伸びをみせている。九州7県では全233市町村の97%で、児童福祉費が5年前に比べて増加し、総額では1.4倍に上っている。幼児教育・保育の無償化などを国が進め、市町村の負担が増したことが影響するが、財源を捻出して独自施策を打ち出す自治体もある。一部で子どもが増加に転じる兆しがあるものの、全体としては少子化に歯止めがかかっていない。政府が「次元の異なる少子化対策」の旗を振る中、住民サービスの最前線では模索が続いている。
 九州の全市町村の児童福祉費は2021年度(決算ベース)、総額1兆1756億円に上り、16年度の8258億円から大幅に増えた。225市町村で増額となり、減額は8市町村にとどまった。19年度に全ての3~5歳児を対象に幼保無償化が始まり、医療費の補助対象年齢も広がるなど国の制度充実が進み、その一部を負担する市町村の支出が増えたことが背景にある。
 本県では24市町村で増加。子どもの医療費の無償化に伴うシステム改修のほか、保育園の改修費といったハード事業が増加の主な要因となっている。
 子育て支援予算は手厚くなっているが、子どもの数は減少傾向をたどる。九州の全市町村の15歳未満人口は22年1月時点で計約167万人となり、約176万人だった17年1月から5%減った。子どもが増えた自治体は九州全体の1割程度の27市町村にとどまる。
 一律的な施策から脱却し、国や県の補助の範囲などを超えて、子育て支援に独自の予算を振り向ける自治体も少なくない。本県では三股町が医療費助成などに早くから取り組み、26市町村で唯一、年少人口(0~14歳)が増加傾向にある。
 九州では全体の4割近くの86市町村が、単独で負担する事業費を増やした。ただ、こうした独自施策は、企業立地やふるさと納税などで財源に余裕がある自治体で目立つ。ある自治体の担当者は「財政力で子育て支援に差がある状態は、本来望ましくない。まずは国が責任を持って底上げを図るべきだ」と話した。

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