【SNS特報班】土木、人件費減で予算捻出 子育て政策充実の兵庫・明石市

おむつ定期便の配達を受ける女性(右)=兵庫県明石市

 宮崎日日新聞など九州4紙がSNSを活用して実施した少子化に関する合同アンケートで、子育て政策が特に充実する全国の自治体を尋ねる質問に対して、兵庫県明石市との回答が最も多かった。同市は「五つの無料化」を基盤に、出生率や人口増といった好循環につなげている。先進自治体はどこへ向かっているのか。実態を探った。
 朝の住宅街にハート柄の模様がある小型トラックが現れた。ピンクのジャンパー姿の「見守り支援員」はおむつを手に、乳児を抱っこした母親(33)とあいさつをかわす。「離乳食を全然食べなくて…」と心配する母親に「体重は増えてる? それなら大丈夫」と笑顔で応じた。
 人口約30万人の中核市、兵庫県明石市。生後3カ月から1歳まで毎月無料でおむつなどを届けて見守る「おむつ定期便」の事業委託先のコープこうべは、「子育て経験者」を支援員の条件としている。
 同事業を含む「五つの無料化」など同市は積極的な子育て支援策で知られる。4月23日投開票の同市長選では、暴言問題を理由に引退表明した泉房穂前市長が後継指名した丸谷聡子新市長が大勝した。
 2013年、1期目の泉氏が中学3年までの子ども医療費を無料化したのを皮切りに、次々と子育て施策を充実させていった。
 「五つの無料化」は(1)子ども医療費(現在は高校3年まで)(2)おむつ(満1歳まで)(3)第2子以降の保育料(副食費を含む)(4)中学校の給食費(5)文化博物館など公共施設4カ所の入場料―を指す。妊娠・出産期から就学後までバランスを取った施策展開で、所得制限は設けていない。
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 「明石だから、という特性や地理、歴史的な要素はない。何にお金を使っていくかという決断が大きい」と佐野洋子副市長は強調する。
 取り組んできたのが予算の振り替えだ。予算額が大きい土木費を21年度までの約10年間で半減させ、高齢化などで居住密度が下がった市営住宅の集約化で費用を捻出した。正職員数を減らしつつ、全国公募で福祉の専門職を任用して業務の質を維持しながら、総人件費を年10億円削減した。
 明石市も人口は1990年代後半から減少傾向が続き、2010年以降は約29万人と横ばい。その後は25~39歳の子育て世代を中心に伸び続け、現在は約30万人。それに伴い、市民税など主要な税収が12年度から30億円ほど増えたという。
 子ども医療費の無料化を打ち出した当初、「所得制限がないことに反発する声も市議会であった」と佐野副市長。現在は「人口増などの効果もあり、もっとやろうという機運が市全体で高まっている」という。

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