【SNS特報班】手厚い子育て支援、年少人口増 三股町 長期的政策結実

三股町の子育て支援センターで子どもを見守る有村美保さん(左)。「子育て環境の充実は移住の決め手の一つ」と話す=三股町樺山

 九州7県の市町村で子育て支援に関する予算が増加する中、三股町は長年の対策が実を結び子どもが増加している。都城市のベッドタウンとしての立地なども影響して、子育て世帯が増加。一方、同町と同じく医療費や給食費の助成を実施する県内の市町村は多く、少子化の解消は容易ではない。識者は「数十年先を見据えた取り組みが必要」と求める。
 同町福祉課によると、子育て支援の取り組みは1960年代から始まり、乳幼児の医療費助成や児童館の建設などが進んだ。医療費助成は小中学生にも拡充。一時預かりや、親に代わって習い事へ送迎する「ファミリー・サポートセンター事業」の利用料の補助のほか、23年度からは中学生の給食費を無償化している。
 町独自の手厚い支援で、子育て世帯の移住も進む。5年前に移住し、4人の子どもを育てる同町の主婦、有村美保さん(41)は「行政の支援も移住のきっかけになった。医療費助成などは助かる」と話す。
 同町の22年の年少人口(0~14歳)は、10年と比べて約10%増の4500人となったが課題もある。人口が増えているのは都城市に隣接する西部が中心。同町は過疎化が進む東部地域を対象に、移住促進策を打ち出している。
 町企画商工課は「効果はすぐに出るわけではなく、継続が大切。限りある財源を有効活用し、さまざまな施策を一つのパッケージとして提供したい」とする。
 県内で子育て支援を実施するのは、三股町だけではない。宮崎日日新聞のまとめでは、自己負担額などに違いはあるものの、26市町村全てが子どもの医療費を助成している。また、10市町村が給食費の無償化や半額補助を実施。一方で20年10月現在、県内の年少人口は14万291人で80(昭和55)年からほぼ半減している。
 宮崎大大学院教育学研究科の立元真教授(心理学)は「行政の支援は大切。ただ、もらってしまえばそれまでで、どこも同じ施策になってしまう」と指摘。「子育ての悩みに寄り添う人材の育成や、親になる世代への教育など、長期的スパンでソフト面の充実に取り組むことが大切」と強調する。

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