創業108年 “ばっちゃん”見守る駄菓子屋 「森川屋商店」(茂原市)【房総老舗巡り】

大正4年創業の森川屋商店=茂原市

 「ばっちゃん。これうまいよ」。小学生3人組が人気のカップ麺を店先ですすり、元気な声を路地裏に響かせる。近くの保育園児も母親と一緒にガラガラと戸を開けやってきた。“ばっちゃん”と呼ばれる店主の鎗田美晴さん(74)は「お帰りなさい」と迎え入れ、買い物かごを渡した。

 茂原市茂原の森川屋商店は、昔ながらの雰囲気が残る駄菓子屋。店内には懐かしい菓子やおもちゃがずらりと並び、お気に入りをかごに入れる子どもたちの笑顔は、令和の今も変わらない。

 1915(大正4)年創業の同店。昭和10年ごろ、店名にもなった森川町から数百メートル離れた現在地に移転した。当時からある木造の建物は今も現役で、かやぶき屋根にトタンをかぶせた趣あるたたずまい。土間も特徴的で、瓶ジュースのふたを敷き詰めて模様にしている。

 もともとは小間物の卸などを手がけていたが、スーパーやコンビニ店の台頭で卸す先が少なくなり、今は駄菓子の販売一本で営業する。「嫁に来て50年」という鎗田さんは3代目だ。

 店を開けるのは午後3時ごろ。小学生が放課後に立ち寄り、近くの保育所を利用する親子も常連。「昔の子ども」がインターネットで見つけ、遠方から訪れることもあるという。

 かつて利用した夫の勧めで長女の蘭加ちゃん(4)と通っている斎藤あかねさん(30)は「子ども目線にお菓子が置いてあるから、選びやすいみたいで大好き」と笑顔。長男の弘輝ちゃん(3)と訪れる尾形美沙さん(45)は「駄菓子屋は家の近くにもあったので懐かしい。このまま続いてほしい」と願う。

 120~150種類ほどある商品の値段は、おおむね10~100円。会計の時には「30円と30円だからいくら?」などと語りかけ、子どもたちに考えさせるのが鎗田さんの楽しみの一つだ。

 「かわいいですよ。子どもは。大きくなってまた店に来て、懐かしがって涙を出してくれる人もいる。そういうのはうれしい」。鎗田さんはそう言ってほほ笑み、子どもたちを迎え入れた。

◇メモ 住所=千葉県茂原市茂原1015 営業時間=午後3~6時ごろ(8、18、28日は定休) 問い合わせ=(電話)0475(22)2746

ずらりと並ぶ駄菓子からお気に入りを選び、かごに入れる子どもたち

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