信念貫き前へ…敵地で高めたVへの機運 「過去最多」の栄冠へ背押したチャント/浦和3度目のアジア制覇

敵地で貴重なアウェーゴールを奪い、機運を高めてホーム埼玉スタジアムでの第2戦に臨んだ=6日、埼玉スタジアム

 サッカーのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)は6日、埼玉スタジアムでホームアンドアウェー方式決勝の第2戦が行われ、浦和はアルヒラル(サウジアラビア)に1―0で勝利。浦和が2戦合計2―1とし2017年以来、5大会ぶりの頂点に立った。過去最多の3度目の栄冠は、浦和の信念がもたらした成果だった。

 4月23日のリーグ川崎戦。1点差を追い付き1―1と踏ん張った。小泉は「すごく価値の高い勝ち点1が取れた」と公式戦11戦無敗を維持した。試合後には、第1戦の地リヤドへ向かう選手たちをファン・サポーターが大合唱のチャントで送り出し勇気を与えた。

 対戦するアルヒラルは前大会のACL王者。今年2月に行われたクラブワールドカップでは、アジア勢初の決勝に進出。決勝でスペインのレアル・マドリードと3―5の打ち合いを演じ、敗れはしたが世界に衝撃を与えた。

 敵地のスタジアムの応援に駆け付けた約5万人の観衆は「ブルーズ(アルヒラルの通称)」の勝利を疑わなかった。浦和からは約700人のファン・サポーターが乗り込んだが、前評判ではアルヒラルの優位は揺るがなかった。

 避けたかったのは大量失点。ホームゲームにつなげるためにも、守備的な戦術が定石だった。今季はショルツ、ホイブラーテンのセンターバックを固定し4―4―2システムを構築してきたが、岩波を入れた5バックの手段もあった。スコルジャ監督は約4カ月間やってきた信念を貫き、スタイルに変更はなかった。

 開始直後から“アジア最強”の力に圧倒された。指揮官は「立ち上がりの20分間は、浦和らしくなかった」と自陣に引いた選手たちは防戦一方となった。前半13分に守備陣の一瞬のためらいから失点。0―0でも良かった一戦で早々の失点は重くのしかかった。

 浦和には残り77分を1失点のまま抑えるか、前に出て点を奪うかという選択を迫られた。選手たちは勇敢だった。伊藤は「早い時間に失点してしまって、ボールを奪いに行かなければいけない」と積極的に前に出た。

 前への意識がチームに広がった後半8分。大久保が前線の興梠にスルーパスを通すと相手選手の足に当たりポストに直撃。一瞬の反応で上回った興梠が詰めネットを揺らした。「1、2本くらいはチャンスがあると思う」と話していた興梠が好機を確実に決めた。

 スタジアムは静まり返り、終盤は浦和への応援だけが響いた。貴重なアウェーゴールを奪い1―1で終了。敵地で予想以上の成果を得て、優勝への機運を一気に高めた。

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