本格韓国料理いつでも自販機で…福井県で無人販売所が増加中 羽二重餅は本店より割安

店舗前に設置した自動販売機で人気メニュー6種類を販売している=福井県福井市順化2丁目の鉄鍋屋

 自慢の料理や商品を無人店や自動販売機で販売する飲食店やメーカーが、福井県内でも増えている。無人販売の代表格となったギョーザだけでなく、韓国料理やお菓子など種類は増加中。新型コロナウイルス禍であっても接触・対面を避けられたことに加え、いつでも気軽に買えるという消費者心理にうまくマッチし支持されているようだ。店側にとっても、コロナ禍の苦境を支えたり、人件費削減につながったりと期待は大きい。

■自宅で店の味

 韓国居酒屋「鉄鍋屋」(福井市順化2丁目)の厨房。急速冷凍機の扉を開けると、もわもわと白い冷気があふれてきた。その中にはカチンコチンに凍ったヤンニョムチキンやチーズタッカルビ、チヂミ…。スタッフがパックに詰め、店舗前の自販機に手際よく入れていった。

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 同店は昨年5月に自販機を設置、冷凍した人気メニュー6種類を24時間販売する。コロナ禍で売り上げが激減し新たな販路を模索していたところ、業者から自販機を紹介され、急速冷凍機と一緒に導入した。

 自宅で手軽に食べられるようにと、電子レンジか湯煎で温めれば食べられるように工夫。だからといって味に妥協はない。商品は全て手作り。人気メニューのヤンニョムチキンは、自宅でもカリカリの食感を楽しめるようにと、店で提供する時よりも揚げ時間を長くし、タレとは別に急速冷凍機で一気に凍らせる。オーナーの遠藤孝政さん(36)は「家でもお店の味そのまま、本格韓国料理を楽しめます」と胸を張る。

 よく売れるのは、片町という場所がらか午前1~4時といい、遠藤さんは「もの珍しさやお試しで買っていく人が多いのでは。営業していない時間帯でも売り上げがあるのは大きい」と話していた。

■超アナログ

 中部縦貫道永平寺参道ICから国道364号を大本山永平寺に向かって車を走らせると、「生羽二重餅」と書かれた看板が目に飛び込んできた。和菓子製造販売「マエダセイカ」が永平寺町市野々に昨年春にオープンした無人販売所だ。

 入店すると「ただ今諸事情により無人にて販売させていただいております」と自動音声で迎えてくれる。大きな冷凍庫には「生羽二重餅」がずらり。チョコ入りやイチゴあん入りなどの変わり種で手ごろなサイズの羽二重餅もそろえる。価格はおつりが出ないようにと、2個で千円や3個で千円など、千円単位に統一。本店直売所(永平寺町松岡吉野)よりも割安だ。

 パネルやパッケージには商品の説明がこれでもかというくらい書かれている。店員がいなくても“おもてなし”はばっちりだ。商品を選び終えたら、さい銭箱の形をした料金箱に現金や商品券を入れて購入完了。超アナログなシステムだが、店内にはカメラが設置され、中の様子をスマートフォンやパソコンでいつでも見ることができる。商品が品薄になったら直売所から運んで補充している。

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 同社は、そば屋だった建物を買い取り一部を改修。人件費を抑えるため無人販売にした。前田晃宏社長(59)は「仮に店員を1人店に置いていたら、赤字かとんとん」と説明する。また「店員がいると、買わなかったら出づらいと感じる人もいる。無人だと入りやすいし、お客さんにとっても楽だと思う」。売り上げは上々だという。

 全国のギョーザの無人販売所では商品が盗まれるニュースが度々流れるが、前田社長は特に心配していない。店内にカメラの死角がないことに加え、8割が永平寺への観光客であることから「お参りしに来た人が盗もうなんて思わないでしょう。お客さんを信用しています」ときっぱり。実際、これまでに被害はないという。

 前田社長は「無人販売は大成功。全国的にも無人販売の方が売り上げが上がっている。これから無人販売は増えていくのでは」。新たな販売形態。需要はさらに高まっていきそうだ。

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