「静岡の模型がないと海外も困る『模型の世界首都』は言葉だけじゃない」タミヤ会長が語るホビー業界のいま

5月10日に開幕した『第61回 静岡ホビーショー』。国内外のバイヤーが来場する業者招待日の初日となる10日午前には、ホビー業界を長くけん引してきた“生ける伝説”田宮俊作静岡模型教材協同組合理事長(タミヤ会長兼社長)による恒例の記者会見が行われ、新型コロナの影響が落ち着きつつある中で開催される今回のホビーショーについて語りました。

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静岡の模型業界を束ねる組合の理事長を務める田宮俊作タミヤ会長兼社長

Q.今年のホビーショーの会場をみて、どのように思ったか?

<田宮俊作理事長>

「会場が狭くなってしまった。いままでと違って児童見学日ができたので、4日間が5日間になった(※「小中高校生招待日」は2023年が3回目となる)。これは非常によい県知事(川勝平太知事)のアイデア。静岡の子どもはホビーショーに来てくれると思ったが、なかなかそうでもない。4年生から上の学童が来てくれる」

Q.子どもたちがホビーショーに来てくれることは業界にとって大切か?

<田宮理事長>

「そうです。『ホビーのまち』と言ったら、静岡の子どもが来ないとおかしい。学校にいるより、ホビーショーに来た方がおもしろい」

Q.コロナが収束してきて、外国人の方はどうか?

<田宮理事長>

「外国人はコロナの関係でこちらに来れなかった。我々はコロナの最中もこの会場を使えなかったが、何らかの形でイベントをやっていた。コロナ以前より注文は増えている。今年は(ツインメッセ静岡)南館も使えるし、我々が売った後も、お客さんに来ていただいて展示会がある(※静岡ホビーショーは会期最後の2日間が無料の一般公開日に設定されていてる)。それがひとつ、静岡ホビーショーの特徴。もう1つの特徴は、自衛隊が参加している。時節柄、非常にありがたい。こういうことをやっているのは静岡のホビーショーだけ」

Q.外国人の手応えはどうか?

<田宮理事長>

「プラモデルの商売は、日本の商品がないとできない。かつてはイギリス・アメリカがプラモデルの先進国だったが、日本のプラモデル業界の方が大きくなり、新製品の発売も多い。みんな、静岡に喜んで来てもらっている」

Q.コロナ禍の間、業界は振り返ってどうだったか?

<田宮理事長>

「コロナはこの業界にとって追い風だった。巣ごもり需要があった。外国も全部そう。外国から注文が殺到しているし、生産能力が足りなくなってしまった。それでタミヤは2022年3月から、新しい工場をフィリピンのセブ島に(作った)」

Q.コロナは業界とって追い風だった?

<田宮理事長>

「追い風です」

Q.これからも、この追い風は続く?

<田宮理事長>

「もういま、日本のプラモデルがないと世界中が困る。いまや、東南アジアは発展途上国ではない。かつては模型を買えない国だったが、いまはみんな模型を買えて、色々なイベントをやっている。東南アジアの人は全部、日本に集中してくる」

Q.国内の需要はどうか?

<田宮理事長>

「もちろん地元なので、一番安く手に入るが、いま、タミヤの市場だと国内と輸出が半分半分。あとは、商品が十分に生産できるようになると、この比率は変わってくるのでは」

Q.業界のアイデアや向かう方向は?

<田宮理事長>

「日本の市場だけではダメ。外国の代理店が来て、色々とアイデアをくれるので、それに従ってやっている。50何年間、(ドイツ)ニュルンベルクのホビーショーに続けて出ていたが、勉強することが多かった。アメリカのホビーショー、ヨーロッパのホビーショー、イギリスのケンジントンでやるホビーショー、色々なホビーショーで、そこで勉強してやってきた」

Q.日本国内ではフィギュアなどが人気かと思うが、外国の代理店からの要求はどんな要求か?

<田宮理事長>

「女性のフィギュアはまた別に売っている。タミヤがフィギュアはやらないのは、やらなくてもよい。それをやったら、他のフィギュアのメーカーが邪魔になる」

Q.海外の需要を考えたとき、強いのは何か?飛行機や戦車、自動車?

<田宮理事長>

「それだけではない。『楽しい工作シリーズ』、地味なシリーズだが、静岡大学教育学部の教授に手伝ってもらってやっている。工作教室、自分の手で作る、それが模型」

Q.自分の手で作るのが、海外でも通じるコンテンツ?

<田宮理事長>

「ドイツでは、手で作る模型を出したら、ドイツ人は『これが本当の科学模型だ』と、そう評価いただいている」

Q.4年ぶりに海外のバイヤーが来場したことを主催者として、どうみているか?

<田宮理事長>

「静岡の模型がないと海外も困る。“模型の世界首都”というのは、言葉だけではない。彼らだって、来なければならない。静岡に来て楽しんでいる」

Q.楽しんでいる様子を見て、どのようにみている?

<田宮理事長>

「それはすごくうれしいですよ。僕らも楽しんでいますからね」

2023年の静岡ホビーショーは新型コロナの影響が落ち着きある中、過去2年ほとんど見られなかった海外のバイヤーが多数来場することが見込まれています。また、一般公開日にツインメッセ静岡南館で行われる「第32回モデラーズクラブ合同作品」にも、アメリカや中国、韓国、台湾など、海外の模型ファンが展示を行う予定になっているということです。

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