【インド】バングラのグラミンユニクロ、6月に終了へ[繊維]

グラミンユニクロ事業は、現地の生活ニーズに合った衣料品提供と安全安心な雇用の創出を軸に、バングラデシュの生活向上に寄与してきた(同事業のフェイスブックページより)

カジュアル衣料販売店「ユニクロ」を運営するファーストリテイリング(ファストリ)が、バングラデシュで衣料品を製造販売する社会貢献型事業「グラミンユニクロ」を6月に終了する。同事業は2010年に始まり、現地の生活ニーズに合った衣料品提供と安全安心な雇用の創出を軸に、同国の生活向上に寄与してきた。しかし開始当初に比べ、事業環境や経済環境が変わり、「一定の役割を終えた」(ファストリ)と判断。6月18日までに全10店舗を閉店する。主要ブランドのユニクロや「ジーユー(GU)」向け衣料品を製造する取引先工場は引き続き残す。

グラミンユニクロ事業は2010年、ファストリがバングラデシュのグラミン銀行グループとともに始めた。同7月には、ファストリの柳井正会長兼社長とグラミン銀行を創設したムハマド・ユヌス氏による事業開始の署名式が開かれ、多くの報道陣が集まった。

 当初の事業方針は、▽商品の素材調達、生産、物流、販売をバングラデシュ国内で完結する▽商品は確実に購入できる価格で販売する▽貧困層の雇用機会を創出する▽収益は同事業に全て再投資する——など。11年1月に事業を正式開始した直後は、グラミン銀行から融資を受けた女性(グラミンレディ)が農村部の家を戸別訪問したり、自宅を店代わりにして衣料品を売っていた。

ただ、徒歩圏内の訪問販売スタイルは効率が悪く売上拡大が難しいなど、課題が浮上。12年に車を使った移動販売を始めたり、13年に初店舗をオープンしたり、時代の流れとともに、事業内容も少しずつ移り変わった。

販売スタイルが店舗中心に変わった以降は、物件選定などで試行錯誤を繰り返しながらも、徐々に増店。ところが、宗教上の慣習を含めた現地ニーズの把握やトレンド把握に苦しみ、思うような商品展開ができなかった。事業開始6年目に初の黒字化を達成したものの、ビジネスは不安定さと常に隣り合わせだった。

特に近年の一番の課題は、事業開始からこの十数年で、消費者のニーズが大きく変わったことだ。開始当初は、「衣料品を欲しいけど買えない」という人々が多かったが、近年は「多少のお金を出してでも、もっと良い商品が欲しい」という人々が増えた。ただ、バングラデシュの場合、原材料を国内調達ではなく仮に輸入して、製品を国内で販売した時には多額の税金がかかる。グラミンユニクロ事業の衣料品をさらに高品質にしたり、もしくはユニクロやGUに切りかえて展開したりといった方針転換は難しかったとみられる。

工場や店舗などグラミンユニクロ事業で働く従業員は約130人に上るとみられる。ファストリは同グループでの採用を案内するなど、できる限りの手を尽くすもようだ。

ファストリは08年から、バングラデシュで同グループ向け衣料品の生産を開始。今後も引き続き、同国を重要拠点に位置付け、生産活動を継続し繊維産業の発展に貢献する。

グラミンユニクロ事業を終了する方針は、ファストリと、同事業を手がけるファストリの完全子会社ユニクロ・ソーシャル・ビジネス・バングラデシュの両社が10日に発表した。最盛期は国内18店舗体制だった。

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