茂吉が愛した「オキナグサ」しとやかに 大石田・聴禽書屋で見頃

聴禽書屋の庭で見頃を迎えているオキナグサ=大石田町

 歌人・斎藤茂吉が疎開した大石田町の聴禽書屋(ちょうきんしょおく)の庭で、茂吉が愛した「オキナグサ」がしとやかに咲いている。濃い赤紫色をしたがくを広げ、訪れた人を優しく癒やしている。

 キンポウゲ科の多年草で、環境省のレッドリストで絶滅危惧II類に指定されている。町学芸員の大谷俊継さん(40)は「70株ほどが生えている。これだけの群生は珍しいのではないか」と話す。綿毛の状態を含めた見頃は6月中旬ごろまでで、大谷さんは「白髪のような花柱から綿毛状になっていく過程を楽しんでほしい」と語った。

 茂吉は1946(昭和21)年2月から2年弱、資産家の離れで生活し、四季を通じ鳥がやってくることから聴禽書屋と名付けた。歌集「白き山」に「おきなぐさここに残りてにほへるをひとり掘りつつ涙ぐむなり」と詠むなどオキナグサを愛し、78年に近くの寺から移植された。

© 株式会社山形新聞社