「まるで草刈り機」シカ食害で山菜が壊滅状態 京都北部、頭抱える住民

シカの食害に遭い、葉を食べられたフキを見つめる安田さん(宮津市上世屋)

 京都・丹後の春の味覚であるワラビやフキといった山菜が、ニホンジカの食害によって深刻な被害を受けている。今冬は降雪量が少なく、雪が溶けるのが早かったため、シカに見つかりやすくなっていたことが原因とみられる。これまでシカに食べられることが少なかった植物も被害を受けており、地元住民は「いつも食べている山菜が手に入らないのは寂しい」と頭を抱える。

 「まるで草刈り機をかけたみたい」。4月中旬の宮津市上世屋。集落を流れる世屋川の沢沿いを歩きながら、宮津世屋エコツーリズムガイドの安田潤さん(74)がつぶやく。自生しているフキやワサビの多くは地上3センチほどの高さで食べられており、株や根が成長していないものが目立つ。「毎年この時季を楽しみにしている人も多いが、今年は壊滅状態だ」と残念がる。

 京丹後市の野間地区でも大きな被害が出ている。副区長の岡本毅さん(75)は「ウドやワラビは根こそぎやられた。今までは無事だったタケノコも、今年はシカに食べられている」と語る。

 岡本さんは今冬の降雪量が少なかったことが一因というが、「そもそもシカを見る頻度が昔とは比べものにならないくらい増えている」と指摘。近年は料理に重宝する春の新芽を知人にお裾分けすることもなくなってきたという。

 隣の兵庫県では、県森林動物研究センター(丹波市)が2006年から、低層の植物に対するシカの食害を調査している。主任研究員の藤木大介さんは「シカによる山野の被害は近畿が最も深刻。県北部ではここ10年が顕著で、土壌の浸食や、下草をすみかにしている生き物の減少といった生態系への影響が出ている」と危機感を募らせる。

 さらに、好きな植物を食べ尽くしてしまうと、今まで苦手と思われていたものも食べてしまうシカの生態に触れ、「ワラビやコゴミといった、シカが好まない植物まで食べられているなら、その地域の植生が大きな被害を受けている証拠」と指摘する。

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