「平和だからスポーツができる」G7広島サミット 参加国イギリス発祥「クリケット」に挑戦 日本代表・木村昇吾選手(元カープ)から学ぶ

伊東平 アナウンサー
平和だからこそ、スポーツができる。G7広島サミットがある今こそ、その喜びをかみ締めたい。

わたくし 伊東平 が、参加国発祥のスポーツを熱く体感します。今回は、栃木県の佐野市にやってきました。今、日本代表の所属するチームの公式戦が行われています。

今回、体感するスポーツは、イギリス発祥のスポーツ「クリケット」です。16世紀ごろ、イギリスで生まれたといわれています。18世紀に大きく発展し、国民的スポーツに成長しました。現在、世界の競技人口はイギリスのほか、インド・オーストラリアなど3億人以上といわれ、日本では4000人余りがプレーしています。

クリケットという競技を聞いたことがある方はいらっしゃると思うんですが、ルールが全くわからないという方も多いと思います。“野球の原型” といわれ、11人対11人で対戦、投手が投げたボールを打者が打つ競技で、見れば見るほどおもしろいスポーツでした。

この方、見たことありませんか? そう、日本代表の現役プレイヤー、元広島カープの “キムショー” こと、木村昇吾 さんです。

プロ野球引退後、真剣にクリケットに取り組み、スリランカに武者修業に行くなど、2018年から日本代表としても活躍しています。

この日、行われていたのは、前年、準優勝の強豪インド・パキスタン人チームとの日本リーグ公式戦でした。とんでもない日におじゃましてしまったのですが、最初の打者「バッツマン」の 木村昇吾 さんが打ち続けていました。

本場オーストラリアでクリケットを始めた、2020年クリケット日本代表キャプテンの 太田智樹 さんに解説をお願いしました。

クリケット元日本代表 太田智樹 さん
「一番違うのは360度、全部がフェアゾーン。前に飛んでもフェアーですし、後ろに飛んでもフェアですし」

直径100mメートル余りのだ円形のフィールドの真ん中に縦22ヤード(20メートル余り)の長方形の「ピッチ」という場所があり、ここで攻撃側の打者「バッツマン」2人が、ピッチの両はしにスタンバイ。

守備側の投手「ボウラー」がワンバウンドでボールを投げて、「ウィケット」という3本の柱を倒すと、打者をアウトにできます。

投手は6球ごとに交代、投げるサイドもチェンジします。打者はウィケットを守りながら360度のフィールドに打ち返します。

打った瞬間、攻撃の2人が同時に反対側に走り、「クリース」という線を2人とも越えると1点、往復できれば2点となります。走って線を越える前に返球でウィケットを先に倒されるとアウトになります。

太田さん
「ただ、クリケットの場合は、間に合わなかったら走らなくていいというルールがありまして。走らず、耐えるっていう」

ここでキムショーさん、見事なバッティングで打球をノーバンで場外へ飛ばし、6点を獲得しました。

また、ゴロで抜けても4点が入ります。

クリケットは、11人対11人で対戦。この日は240球ずつ投げあい、攻守交替は1回だけというルールの試合。

太田さん
「ここで無理してアウトになると、木村さんの打席は終了になる」

アウトにならなければ、ずっと打ち続けることができます。

伊東アナ
「聞きますけど、誰も今、アウトになっていない。30分経ちましたけど…」

太田さん
「いい感じですよ」

伊東アナ
「丸1日とか、やることあるんですか?」

太田さん
「きょうの試合がまさにそんな感じで、午前11時スタートで、終わるのは午後5時くらいだと思います」

伊東アナ
「わたしたち、終電が5時半なんですけど」

太田さん
「もう1泊していただいて…」

試合開始から1時間が経ち、ようやく休憩時間に。公式戦にもかかわらず、少しだけインタビューさせていただきました。

クリケット日本代表 木村昇吾 さん
「最後まで打ちたいので。3時間、打ち続けたい。アウトにならないように打ち続けていくっていうのが、オープニングの仕事なので。リスクをなくして大事にいきながら、後でガバーンと打てるように、今」

伊東アナ
「気持ちよく最後に打つためにコツコツと。目標的にはどれくらい?」

木村昇吾 さん
「100点以上は取りたいですね。今のところ、20は取っているので」

短い休憩時間が終わり、再びフィールドへ。イギリスなど海外では休憩時間にお菓子などを楽しむティータイムがあるとのこと。

クリケット元日本代表 太田智樹 さん
「試合中にくつろぐ時間があったり…」

伊東アナ
「わたしの知っている範囲のスポーツでは、ないですね。ここからの木村さんにさらに注目です」

そして、木村さんの打球はノーバンで場外へ。6点。さらに…

太田さん
「始まった。始まった」

ここまで38得点を獲得。

ところが、その直後、カメラが回ってないすきにアウトに。木村さんに話しかけづらい状態に…。それでも体感取材するのが、わたしの使命…。

クリケット日本代表 木村昇吾 さん
「うーん、くやしいですね。シックス(6点)を連続で取った後にアウトでしょ、気持ち悪いですよね」

伊東アナ
「みなさん、すごく盛り上がっていましたけど」

木村さんが守備につく前に、スイングを教えていただきました。

木村昇吾 さん
「このバットなんですけど、平らな方で打ちます」

持ち方もていねいに教えていただきました。3本の柱(ウィケット)を守るため、縦にスイングしなければならないのですが…

伊東アナ
「ああ、当たっちゃう。難しい」

木村昇吾 さん
「こうやって当たんないでしょう。こうやって、練習しました。まっすぐ入って、まっすぐ上げるっていうのが大事なんですよ」

伊東アナ
「これは、たいへんですね」

木村昇吾 さん
「そんな元プロ野球選手だからといって、ちょっとやったぐらいで、甘いもんじゃないですよ。世界の競技人口、第2位ですよ」

そろそろ時間もないので、太田さんとバッティング練習。

伊東アナ
「難しい。真っすぐ返すのが難しい」

真っすぐ打ち返すことすら、できません。

クリケット元日本代表 太田智樹 さん
「すごく力んでいるので、なるべく力まず。なるべく左手だけでバットを振り抜いて」

そして、ついに…

伊東アナ
「おお、なるほど。これ、楽しい」

太田さん
「そんな感じですね。よくなってきました。前に飛んでいます」

太田さんの打順が近づいてきたので、ラストです。

伊東アナ
「バットをうまく扱えるようになってくると、また喜び・楽しさが」

この日、木村さんと最初から出ていた日本代表の 宮内渉 さんが、人生で初めて100点(センチュリー)をたたき出す快挙。

クリケット日本代表 木村昇吾 さん
「(宮内さんは)初めてだから、めちゃくちゃうれしいと思います」

伊東アナ
「ずっと続けてきて、初めてのセンチュリー。むちゃくちゃ、いいタイミングでわれわれ、来ちゃいましたね」

木村昇吾 さん
「ぼくじゃなくって、すいません」

クリケット日本代表 宮内渉 さん
「本気でクリケットをやっている中で成果が目に見えて出たので自信にもなりますし、がんばりたいなと思える瞬間でしたね」

伊東アナ
「野球も経験されて、クリケットの難しさ・奥深さをどう感じていますか?」

木村昇吾 さん
「むちゃむちゃ、おもしろいですよ。できないことって楽しいじゃないですか。できないことをチャレンジしてできたら成長じゃないですか」

伊東アナ
「あらためて、こういったスポーツができている状況をどう感じていますか?」

クリケット日本代表 木村昇吾 さん
「確かに平和じゃないとできないですし、スポーツって国と国の争いごと、それをなしというか、スポーツはスポーツで。お互い、リスペクトしながら戦うというのがスポーツだと思うので。それが国境を越えて国同士で戦うという意味では、お互いの文化を知るとか交流になると思いますから、いろんなことを知ってもらいたいなと」

伊東平 アナウンサー
この日、キムショーさんのチームは、強豪相手に見事220対213で勝利しました。おじゃましたことがあだにならず、本当にほっと胸をなでおろしました。

クリケットは、「It’s not Cricket」という言葉が「フェアではない」という意味になるほど、公正を重んじるスポーツです。さすが、“紳士の国” イギリスで発祥したスポーツらしく、審判に文句を言うことすら許されないそうです。フェアを重んじるG7広島サミットにふさわしく、今回はクリケットについてお伝えしました。

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