もみ殻からプラ原料 弘前大(青森県)園木准教授ら実用化目指す CO2排出削減研究プロジェクト

稲わらやもみ殻を、プラスチックなどの材料に変える技術の実用化を目指している園木准教授(左)と樋口雄大助教。手前右の容器が稲わら、中央がもみ殻、左が精製したプラスチックの材料

 弘前大学農学生命科学部の園木和典(とものり)准教授(48)らが、稲わらやもみ殻などの農業副産物を、プラスチックやナイロン繊維などの材料に活用する技術の実用化を目指している。温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出削減に向けた、国内最大規模の研究プロジェクトの一環。プラスチックなどの生産に伴う石油・石炭といった化石資源の使用を減らし、大気中のCO2を吸収する植物を最大限活用することが狙い。

 プロジェクトには東京農工大を中心とした全国約30の大学や企業、自治体が参加。食料だけでなく、人間の活動に必要なエネルギーや材料も農業から生み出すことを目指す新しい概念「炭素耕作」を唱える。農林業そのものに加え、材料開発、燃料生産、受け入れる社会づくりなど五つのターゲットを定め、農学、工学など分野の枠を超えて研究に取り組む。

 プロジェクトは国内最大規模の研究支援制度「COIネクスト」に採択され、2021~22年度、研究の体制づくりなどを進める「育成型」として取り組んだ。本年度「本格型」に昇格し、最長10年間、国からの支援を受けられることになった。

 その中で、材料開発の分野を担当する園木准教授らは、植物の葉、枝、幹などから取り出すことができる「リグニン」という物質に注目。紙の原料になるセルロースに次ぐ植物の主な構成成分だが、化学構造が複雑で、これまで使い道がなかった。

 弘大はこれまでも、リグニンを活用しやすい形で植物から取り出す技術などを研究。実験室レベルでは、もみ殻や稲わらから取り出したリグニンを、微生物を活用するなどしてプラスチックなどの原料に変えることができるようになった。今後、稲わらなどより収集しやすいもみ殻を念頭に規模を拡大し、実用化に向けた研究に取り組む。

 園木准教授は「青森は農業が主たる産業。農業副産物の活用は、これまでほとんど注目されてこなかったが、ここからいかに役立つ物をつくることができるか考えることは、農業県として意義がある」と話した。

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