LRT8月開業、交通環境変化に注意 信号表示や軌道内走行禁止など

LRTの交通ルール

 JR宇都宮駅東側から芳賀町に整備され、8月に開業予定の次世代型路面電車(LRT)で、県警や市が交通事故防止の啓発活動を強化している。LRTは車やバスと並び、道路上の軌道を走行する。道路環境の変化や新たな交通ルールに伴い、交通事故発生の懸念もある。開業前の試運転が終盤に入る中、県警や市は、軌道内の走行禁止や信号表示などを周知しつつ、「ドライバーは従来通り車用の信号表示に従ってほしい」と呼びかけている。

 県警交通企画課によると、LRTは車と同様に信号機で交通規制される。全区間の18交差点で、LRT専用の信号機が車用の信号機の横に取り付けられた。LRTは黄色い矢印の点灯時に進む。車用は赤信号のほか、直進と右左折が矢印で表示される。LRTの直進と車の右折は同時には表示されない。

 最も注意が必要な点は、こうした信号表示の見方だ。LRT用と車用の信号表示の組み合わせは複数ある。ただ、同課の担当者はドライバーに向け「LRTの信号に惑わされないで」とし、従来通り車用の信号の順守を周知している。

 車は軌道内で走行や停止ができない点も重要だ。交差点の右折時は軌道上に止まらないよう、手前で停止する。違反時は違反点数と罰金が科せられる。停留場のある交差点では、歩道と停留場から横断歩道に入る利用客がいるため、一層注意を払う必要がある。

 全区間14.6キロの一部にはLRT専用信号がなく、「接近表示器」が設置された横断箇所がある。遮断機はなく、「電車が来ます」と表示され音声が流れた時には、軌道を横断しないよう求めている。

 LRTを巡っては2022年11月、試運転中に脱線事故が発生。宇都宮市によると、路面電車を導入する全国の27市町では21年、計35件の交通事故が起きた。車が右折する際や路肩の駐停車車両を避けようとして軌道内にはみ出し、後方から来た路面電車と衝突するケースが多いという。

 LRTは試運転を再開し、今月中にも最終段階となる見通し。ただ、取材では宇都宮市内で、車の右折時に誤って軌道に入りそうになったほか、車が直進の信号表示に気が付かずに停止したままだったケースの目撃があった。

 市は市内の全約25万戸にパンフレットを配布し、交通ルールなどの周知を進めてきた。担当者は「なじみのない道路環境になる。道路利用者に疑問を持たせないよう、周知し続けて開業を迎えたい」としている。

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