立ち会い出産「感動増す」 コロナ5類移行で再開の動き 喜びの瞬間家族と

ゆめクリニックの立ち会い出産再開後、最初のお産となった大谷さん家族=9日午後(ゆめクリニック提供)

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けの5類移行などに伴い、県内の産婦人科で中止していた出産時の立ち会いや入院中の面会を再開する動きが出ている。初の出産に立ち会った家族や対応を緩和した医療機関からは「感動が増した」「家族に喜んでもらえるのはうれしい」との声が上がる。出産の現場にも当たり前だった光景と笑顔が戻ってきている。

 9日午後2時56分、宇都宮市のゆめクリニック。分娩(ぶんべん)室から産声が上がった。市貝町赤羽、会社員大谷智美(おおたにともみ)さん(31)は長男志晴(ゆきはる)ちゃんを出産。夫の会社員友志(ともゆき)さん(40)は隣で見守り、励ました。クリニックはコロナの5類移行を受け、中止していた出産の立ち会いを8日に再開。家族の付き添いは約3年ぶりだった。

 智美さんは「痛みで余裕がなかったが、夫の顔を見たら安心した。一緒にいてくれて良かった」。友志さんは「頭が真っ白で妻の手を握るしかできなかった。立ち会えないと思っていたので、産声を聞いたときは感動が増して涙が出た」と頬を緩ませた。

 角田哲男(つのだてつお)院長(62)は「人生に何度とない喜びの瞬間を家族にも共感してほしい」とし、立ち会いの中止を申し訳なく思っていたという。コロナ禍では替わりに、出産時の母子と家族をオンラインでつないできた。

 待ちわびた制限の緩和。「頑張るのは母子と夫で、医療者は応援団。妻のそばで励まし続けた夫を直接ねぎらえるのはうれしい」と感慨深げに語った。

 さくら市のさくら産院でも8日から、外来受診時の付き添いや、出産当日に限っていた面会を再開した。泉章夫(いずみあきお)院長(61)は「家族にエコーで赤ちゃんの様子を見せて喜んでもらえるし、医師の説明も伝わりやすい」と話す。ただ、院内感染の懸念はまだ拭えない。状況を見ながらさらに制限を緩和していく考えだ。

 日本産婦人科医会が2022年3~4月に医療機関に実施した全国調査では、77%が産後の面会を、63%が立ち会い出産を中止するなどしていた。

 自治医大産科婦人科の高橋宏典(たかはしひろのり)教授によると、感染状況を踏まえ、県内の大半の1次医療機関で立ち会い出産を再開しているという。高橋教授は「子の誕生を実感して父になる意識が芽生えるなどの意義がある」と強調。「出生数が減る中で患者のニーズを満たす必要もあり、再開は喜ばしい」と話した。

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