バスケ・長崎ヴェルカB1昇格! 愛され続ける“中年の星” 最年長42歳「ギブちゃん」

体を張り続けてB1昇格の立役者となった長崎ヴェルカのギブス=千葉市、千葉ポートアリーナ

 14日、長崎ヴェルカが1部(B1)昇格を決めたバスケットボール男子のBリーグ。その見どころの一つに、各チームを大黒柱として支える外国人選手の存在がある。ヴェルカのそれは、チームを始動時から引っ張ってきたジェフ・ギブスだ。最年長の42歳とは到底思えない体幹の強さ、闘争心あふれるプレーに加え、愛嬌(あいきょう)のある人柄やしぐさ…。多くのファンから「ギブちゃん」と呼ばれ、愛されている。
 身長188センチは2メートル超のビッグマンが目立つ中で“小柄”だ。だが、体重はリーグ最重量クラスの112キロ。経歴もちょっと異質で、一番にハマっていたのは出身地の米国で絶大な人気を誇るアメリカンフットボールだった。9歳からのバスケットよりも3年ほど早く始め、以降は並行して二つの競技に励んできた。
 大学卒業後、塗装会社に就職。働きながらNFL(米プロフットボールリーグ)への挑戦を続けた。だが、トライアウトで「サイズ的に厳しい」と言われて断念。バスケット一本に絞った後、ドイツでプロのキャリアを踏み出し、2010年に来日した。それからトヨタ自動車東京(現A東京)で活躍。Bリーグ初年度の16年からは栃木(現宇都宮)で人気を高めた。
 21~22年シーズンからB3に参入したヴェルカへの移籍は「葛藤はあったけれど、スタートアップする過程に携わりたかった」。期待と不安が入り交じった中での始動だったが、長崎のファンはすぐに「ギブちゃん」に魅了された。中学時代からずっと選んできた「34」の背番号は、米プロNBAの元スーパースター、チャールズ・バークリーと同じ。長崎でも多くのファンが、その「34」のグッズを身につけるようになった。
 「ぶつかるのも好きだし、ぶつかられるのも好き。自分の体をささげてボールを取りにいくのも怖くない」。そんな“アメフト仕込み”のプレーを支える体も「やっぱり42歳のものになってきた」と苦笑いする。米国で離れて暮らす家族のことも、片時も頭から離れない。それぞれのスポーツに熱中する4人の子どもたちを「ユーチューブで見ることはあるけど…」。寂しさは募る。
 でも、プロとして人前で弱音は吐かず、衰えも見せない。周囲を鼓舞する姿はまさに“中年の星”だ。ヴェルカのハードなスタイルや仲間たちが「若いころの自分を思い起こさせて、高いエナジーでやれている。絶対に後れを取らないぞという気持ちが強くある」。
 B1昇格を決めた14日も躍動した。第4クオーター途中の一発退場は残念だったが、序盤劣勢だった前半で15点を挙げ、出場約23分でチームトップの7リバウンド、8アシスト。試合後、前田健滋朗監督はこう感謝を込めた。
 「ああ、これがジェフ・ギブスだなと。彼らしいプレーを大一番で表現してくれたし、彼のハードワークがわれわれの土台でもある。貢献度はクラブにとってものすごく大きい」

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