「きょう食べる物ない」日本のミャンマー人留学生、限界生活 クーデターで避難、言葉の壁

生活の相談に訪れたミャンマー人留学生の話を聞く「ミャンマー関西」の猶原信夫代表(奥)=神戸市長田区久保町6

 5月に入り、在日ミャンマー人を支援する市民団体「ミャンマー関西」(神戸市長田区)にミャンマー人留学生から生活苦の相談が相次いでいる。新型コロナウイルス禍の水際対策が緩和されて以降、留学生が急増しているが、まだ日本語ができないためアルバイトに就けず、困窮に陥るケースが目立つ。2021年のクーデター後の混乱が続く現地は出国ラッシュになっているといい、同団体は留学生への緊急支援活動を始めた。(高田康夫)

 「食べる物がない」

 5月13日、ミャンマー関西の事務所で留学生4人が窮状を訴えた。18~25歳の男性1人と女性3人で、4月上旬に来日。同団体の猶原信男代表(71)によると、同様の相談は「5月だけで計8人」に上るという。

 4人はミャンマー南部出身。21年2月のクーデター後、民主派勢力と国軍の戦闘により近隣でも民家が燃えるなどしたという。電力供給がほぼなくなり、2日間全く電気が使えない時もあった。「今も大きな音がすると不安になる」と女性(19)。高校を卒業したが、大学は閉鎖されて進学できなかった。

 女性は「ミャンマーでの生活は難しい」と日本への留学を決めた。まだ日本語での日常会話は難しいが、現地の日本語学校に約500万チャット(約32万5千円)を支払って手続きを急ぎ、神戸市内の日本語学校に留学した。

 日本語学校が多い神戸市内には多くの留学生らがおり、国籍別の人口でミャンマー人は963人(4月末現在)。水際対策緩和前の昨年3月末から約3倍に急増している。一定の給与がある技能実習生と違い、多くの留学生は週28時間以内に定められたアルバイトで生活費や授業料を賄っており、仕事が見つからなければ生活が成り立たない。

 4人も日本で働きながら学ぶ計画だが、「日本で働くのが難しいとは知らなかった」と話す。現地の日本語学校に留学手続きを依頼する際、日本での仕事を探してくれると聞いたが、まだ日本語で会話ができないため、紹介された会社に就労を断られたという。

 ミャンマーから持ってきた食べ物などで1カ月以上しのいできたが、いよいよ生活が行き詰まり、知り合いのミャンマー人留学生を通じて知ったミャンマー関西の戸をたたいた。

 猶原さんによると、現地では電力不足や物価高騰が深刻な上、ホテルやレストランなどで雇用がなくなり、日給800円の仕事に人々が殺到するという。そんな中で留学できるのは「ある程度の余裕がある家庭」だが、親元から来日後の支援までは期待できない。

 猶原さんは4人に当面1週間の食費や米などを渡すとともに、留学生を対象に炊き出しの実施も検討する。「このペースで増え続ければ持たない」と緊急支援カンパも呼びかけ始めた。

 相談に訪れる留学生は、ミャンマー国内の少数民族が目立つという。「国軍の暴力は収まるどころか過激になり、空爆も続いている。しわ寄せが地方の少数民族を直撃していることを知ってほしい」としている。

 カンパの振込先は、郵便振替口座00930-9-276064。加入者名は「ミャンマー関西」。

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