尼崎市が2億円補助「東園田町総合会館」完成後も使えず、1年半遅れでオープン 背景に無資格業者や町会の対応の遅れも

予定から約1年半遅れてようやくオープンした東園田町総合会館=東園田町4

 兵庫県尼崎市が2億円を補助し、自治会が建て替えを進めたものの工事会社と代金トラブルになっていた「東園田町総合会館」(東園田町4)を巡り、有識者を交えた自治会の調査委員会が報告書をまとめた。報告書は「無資格の業者らを信頼し任せたのが問題の核心」としつつ、自治会の進め方についても「事業を適正に執行できる組織体制がなかった」と指摘。運営面での責任の明確化や透明性、チェック機能の確保などを求めた。20日、同会館で報告会が開かれる。(広畑千春)

 同会館は阪急園田駅北側にあり、鉄骨一部4階建て延べ約750平方メートル。市が園田競馬場の周辺整備事業費から2億円を交付し、2020年9月、地元自治会の「東園田町会」が京都市の施工業者と請負契約を結んだ。だが1階のテナント向け設備など約6千万円にのぼる追加工事費を巡り訴訟トラブルに発展。ほぼ完成しながら使えない状態が続き、予定から約1年半遅れの今年2月にオープンした。

 調査委は昨年6月に設置。外部委員の山下淳・元関西学院大教授(行政法)や弁護士、1級建築士の住民ら計6委員が、中立の立場から業者や当時の町会幹部ら10人に聞き取りを行い、今年4月に報告書を取りまとめた。

■無資格業者に委託

 報告書が「問題の核心」としたのが町会が19年12月に設計・監理などの契約を結んだ尼崎市の業者だ。

 代表の男性は1級建築士を名乗り、構想当初から参画していた。だが実際は無資格で、20年1月には、複数の業者が「図面がそろっておらず不正確」などと指摘し、入札不調に。見積額が予算を大きく上回ることが判明しているにもかかわらず、男性は元通りの計画を主張し、当初は資格のなかった京都市の施工業者に自作の見積書を提出させ、下請けへの支払いも担った。

 男性の一連の行為について委員らは「極めて不誠実」とし、建築士法違反などの疑いを指摘する。

■建て替え急ぐあまり

 一方で、町会側の対応についても、男性らの資格を十分に確認せず、完成が遅れるのを懸念して計画の大幅見直しなどの対応を避け続けた結果、「傷口を大きくした」と苦言を呈した。

 当時の町会長らで構成し実質的な役割を担った「建設準備委員会」も「位置付けがあいまいで設置半年でほぼ開催されなくなり、記録もない」とし、「決定プロセスが不明瞭かつごく少数で進められ、責任も不明確な体制が問題を引き起こした」と結論付けた。

 町会はオープン前の手直し工事などで、既に約2千万円を拠出。一部体制を変更しており、「地域の人が安心して使えるよう、今後に向け報告を真摯に受け止める」としている。

 報告会は午前10時からで、参加自由。東園田町会TEL06.6491.9303

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