内部告発で記録持ち出し、京都市が控訴しない方針 市に賠償命じた判決確定へ

京都市役所

 京都市の児童養護施設で起きた性的虐待事件を内部告発するため、児童に関する相談記録を持ち出した男性職員(52)が市から受けた懲戒処分は違法だとして、市に損害賠償を求めた訴訟で、市は19日までに控訴しない方針を固めた。男性側も控訴しない方針。市に約220万円の損害賠償を命じた京都地裁判決が確定する見通しになった。

 判決などによると、男性は児童相談所に勤務していた2015年、児童養護施設で施設長から性的虐待を受けたとする相談が放置されているとして、市の公益通報窓口に通報。男性が担当外の記録を閲覧して自宅に持ち帰ったことなどを市が問題視し、停職3日の懲戒処分にした。

 男性が処分取り消しを求めた別の訴訟では、一、二審とも記録の持ち出しには公益通報の目的があったと認め、処分は違法と判断、21年1月に最高裁で処分取り消しが確定した。男性は処分で損害を受けたとして、市を提訴し、京都地裁は4月27日の判決で、違法な処分で精神的苦痛を受けたとして、市に約220万円の支払いを命じていた。

 市コンプライアンス推進室は控訴しない理由について「市の主張は一部を除いて認められており、控訴にかかる追加費用も考慮して判断した」としており、全額支払う方針。男性は「判決は市の公益通報制度の問題点に対して評価を避けており、納得できない部分もあるが、これ以上の結果を得るのは難しいと考えた」とコメントした。

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