医療的ケア児の母の姿、ありのままに 「現状知って」大分市で写真展【大分県】

「医療的ケア児の母である私にしか見えない特別支援学校の風景を写したい」と話す山本美里さん。三脚を立て、セルフタイマーで“自撮り”した作品約60点を展示している=大分市のアートプラザ
作品の一つ。給食の時間になっても、付き添いの山本さんの分はない
修学旅行の記念写真に見立てた作品。通行人として映り込む自分を演じている

 【大分】写真家の山本美里さん(43)=東京都=の個展「透明人間―Invisible Mom(インビジブル マム)―」が大分市荷揚町のアートプラザで開かれている。医療的ケアを必要とする子の母親である自身の姿をありのままに伝える作品が並ぶ。医療的ケア児と家族の抱える問題を知ってほしいと市民団体「たのしいプロジェクト」が主催した。21日まで。無料。

 医療的ケア児とは人工呼吸器や胃ろうを使用し、たんの吸引、経管栄養などの医療行為が日常的に必要な子どものこと。全国に2万人以上いるとされる。2021年に医療的ケア児支援法が成立したが、受け入れ施設の不足や保護者の過重な負担など課題は多い。

 山本さんは4児の母。次男の瑞樹さん(14)が重度心身障害児で、15年から特別支援学校に通う。人工呼吸器を装着しているため保護者が付き添い、待機するのが通学の条件だった。週4日、1日6時間を校内で過ごした。働くことも家事もできず、自分の時間もない。同年冬、ストレスで適応障害を発症した。

 17年に一念発起。京都芸術大の通信教育部で写真を学び始めた。特別支援学校長に何度もかけ合い、校内での撮影許可を得た。テーマは医療的ケア児。作品を見た大学の教員に「子どもの障害より、自分の置かれた環境に不満を感じているのでは」と助言され、自分の姿を撮ることにした。

 教室では気配を消すよう求められ、給食は出ない。修学旅行に同行しても集合写真に納まることはない。そんな自分を「透明人間」と表現して撮影し、写真集にまとめた。昨年出版し、話題に。全国で個展を開いている。

 会場には写真集の作品を中心に約60点を展示。医療的ケア児の母としての孤独や憤りを、ユーモアを交えてポップに表現している。

 「障害者とその家族というと、感動や命の美しさをテーマに語られがち。私たちは特別じゃない。ありのままの姿を見て、現状を知ってほしい」と訴える。「子どもも母親も、自分の人生を諦めずに生きられる社会になってほしい。私はここにいる、そう声を上げ続けたい」

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 たのしいプロジェクトは会場でワークショップ「コーヒーのドリップバッグに絵を描こう」を開いている。参加費500円。

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