ゼレンスキー大統領 夕方 広島空港 到着へ 決断の背景は JNNワシントン支局長に聞く

小林康秀 キャスター
G7広島サミットのテーマはさまざまあるんですが、ロシアのウクライナ侵略などの地域情勢、そして、それに伴って核兵器使用のリスクが大きくなっていることも重要な議題とされています。

核兵器のない世界の実現を自身のライフワークとする岸田総理は、被爆地であって復興を遂げた広島が平和へのコミットメントを示すのに最もふさわしい場所と判断して、開催を決定しました。さまざまな議題について各国で主張・意見の食い違いがあるかもしれませんが、最終的にどういう形で成果文書まで持っていくのか、そこに注目したいと思います。

サミット2日目(20日)の主なスケジュールです。午前10時すぎからすでに始まっていますセッション1つ目は、「経済安全保障」の話であるとか、ワーキングランチでは「パートナーとの関与の強化」なども行われます。そして、岸田総理が招待国など出迎えまして、インドやブラジルなども加わって行われる「拡大会合」では「食料・保健・ジェンダー」「気候・エネルギー・環境」など話し合いが行われて、夕食会、晩餐会が行われることになっています。

開催中のこのG7広島サミットに出席しますウクライナのゼレンスキー大統領は、20日夕方、広島空港に到着することがわかりました。

外務省は、広島サミットについて、あす21日にゼレンスキー大統領が対面で参加する形で、G7首脳との間でウクライナに関するセッションを開催すると、20日朝、正式に発表しました。

また、ゼレンスキー大統領は、ほかの招待国の首脳も交えたセッションにもゲストとして参加。岸田総理との首脳会談も行われる予定だとしています。

ゼレンスキー大統領は、会議のため滞在していたサウジアラビアをすでに出発したとみられ、政府関係者によりますと、20日夕方、広島空港に到着。滞在中、アメリカのバイデン大統領とも首脳会談を行って、原爆資料館にも訪れる方向で最終調整が進められいるということです。

取材にあたっているJNNワシントン支局の 樫本 さんに話を聞いてみたいと思います。ゼレンスキー大統領がG7サミットに対面参加することになったその理由を聞きたいんですが?

JNNワシントン支局 樫元照幸 支局長(国際メディアセンター)
まず日本側がですね、岸田総理がことしに入って、いろいろ選択肢が考えられるというふうな形で意欲を示していまして、実際に3月にキーウを訪問しました。それ以降も働きかけが続いていて、それがこういう形で実現したということですね。

ゼレンスキー大統領の側からすると、遠く離れたアジアまで足を運ぶというのはですね、戦時中ですので、かなりのリスクを伴うわけですけれども、G7という大きな舞台を利用して、しっかりと支援をアピールするとそういった機会にしようとしたという、そういう思惑があると思います。

小林康秀 キャスター
以前から広島に来ることは模索されていたんでしょうか?

JNNワシントン支局 樫本照幸 支局長
実は報道陣の間では、どういう形でゼレンスキー大統領が参加するのか。もしかしたら訪日もあるんじゃないかというのが、日本の報道陣だけでなく、世界各国の報道陣の中でも情報が流れていまして、ここに来るまでアメリカ政府の記者会見やブリーフィングでも、たびたび、その質問が飛んだんですけれども、アメリカ政府、いろんな形が考えられるというふうな形で、訪日の選択肢を排除していなかったんですね。それがギリギリの段階でウクライナ側が決断をして、来るということになったとそういう流れですね。

小林康秀 キャスター
移動のためにもかなりハードル高いですけれども、G7各国はどの程度関与しているんでしょうか?

JNNワシントン支局 樫本照幸 支局長
アメリカが支援をしていたというのは間違いないと思います。日米の連携を利用して、ウクライナのの働きかけが行われたとみられます。ただですね、今回、アメリカ軍機で来るのではないかと当初、見られていたんですけれども、一部情報によりますと、フランスの政府専用機を使って移動するとみられるというふうな情報もありまして、そういう意味ではG7のですね、日本・アメリカだけではなく、フランスといった多国間の枠組み・協力を使って今回の訪日が実現するということになりそうです。

小林康秀 キャスター
実際、広島に来て、どんなことをすると現段階でわかってるんでしょうか?

JNNワシントン支局 樫本照幸 支局長
これ、全くわかりません。全て調整中だと思いますけれども、きのう・おととい日ぐらいの時点でまだ、いわゆるどこに宿泊するんだみたいなことも一部情報が流れたぐらいですので、どういうふうなことが行えるかわかりません。当然、G7に対して、それから拡大会議で支援を訴えるということは当然あるでしょう。

それからバイ会談、いわゆる2国間の会談。アメリカはまだ発表になっていませんけれども、おそらく、アメリカ・バイデン大統領との会談が行われるのは間違いないと思われます。

それから岸田総理、さまざまな国との会談も注目されますけれども、今回、インドやブラジルなど、G7とはいわゆるウクライナやロシアに対する距離感が異なる国が今回、訪問をしています。こういった国々に対してどういった訴えをするのか、どういった接触があるのか、会談はあるのか、そのあたりも注目になると思います。

国際ジャーナリスト モーリー・ロバートソン さん
やはりヨーロッパの人にとっては、ウクライナは裏庭というぐらいに近い場所なので、そこで戦争が拡大しているということや、よもや核が使用されたりするシナリオというのは、本当に身近に感じる悪夢だと思われます。しかるに日本社会では、「ヨーロッパの一角で何々、戦争が起きてるの。旧ソ連の国同士」みたいに遠く感じる人もいるんですよ。ゼレンスキーさんが日本を電撃訪問をする中で、どのような振る舞いをすれば、日本人の共感を呼び起こせるでしょうか?

JNNワシントン支局 樫本照幸 支局長
そのあたり、ゼレンスキー大統領は非常に巧みといいますか、去年の12月にワシントンにこの侵略が始まって初めて海外に出て、アメリカを訪問しました。このとき、上下両院の議会で演説を行ったんですけれども、この演説が非常に心を打つ内容で、単に支援をしてほしいというだけではなくて、ウクライナへの支援というのはいわゆる民主主義の将来を守るかどうかの支援なんだというふうなことを訴えて、ふだんは与野党がかなりもめる議会なんですけれども、スタンディングオベーションで大きく拍手が上がるというシーンもありました。ですので、どういったらその国の人たちの心をつかめるか、このあたりはかなり巧みに計算してくると思います。

1つ考えられるのは、広島というのは、いわゆる戦争で荒廃して、そこから立ち上がった街ですので、そういった経験と重ねて、ウクライナ、今現在、戦争状態にありますけれども、そのあたりの復興に向けて、日本との対比をうまく盛り込みながら発信をしていくんじゃないかと思いますので、ゼレンスキー大統領が、いわゆる一般的な記者会見のようなもの、もしくは演説のようなものをする機会があるのか、このあたりも注目になってくると思います。

モーリー・ロバートソン さん
アメリカ人に訴えかけるときっていうのは、例えば自由と民主主義というフリーダムという言葉、アメリカ人にとってはとても心に刺さる言葉なんですけども、日本の場合、歴史的な経緯の中で市民が民主主義を勝ち取ったとか、そういう直接の歴史ではないので、何となくお上が決めてくれればいいんじゃないのと考えている。多少、戦争と平和を受身で考える日本人もけっこういると思うんですよ。そういう人たちの心のバリアをどう突破するのかなというのが関心事になっております。

小林康秀 キャスター
その振る舞い注目したいと思うんですが、もう1つ。バイデン大統領がきのう、宮島の「岩惣」でのワーキングディナーを途中退席したり、きょう午前中も参加していないというような情報もあるんですけれども。そのあたりというのはなぜなんでしょうか?

JNNワシントン支局 樫本照幸 支局長
きょう午前中にセッションが行われているんですけれども、バイデン大統領は欠席をしました。異例のことなんですね。時々、日程の都合で一番最後のセッションを短く途中退席というのは今までもあったんですけれども、全て1つのセッションを欠席するってのは極めて稀ですね。

債務上限問題という国の借金に関する大きな問題が今、ワシントンでは焦点になっていまして、これが、6月1日にも締め切りというか、6月になってしまうと、デフォルトを起こしてしまうんじゃないかというふうな中での与野党の協議が行われています。これが難航しているんですけれども、アメリカに向けてのバイデン大統領の態度としては、広島にいるけれどもしっかりと対応しているんだぞというのをアメリカ向けにアピールしなくてはいけないという面もあります。実際にワシントンで行われている交渉を、こちらで連絡を受けながら対応にあたっているというふうにみられるんですけれども、そういったアメリカに向けての、しっかり取り組んでいるんだというふうなことをアピールをしていると、そういう狙いもあるんじゃないかなというふうに思います。

小林康秀 キャスター
各国のさまざまな思惑の中で今、サミットが行われているということですね。樫本さん、ありがとうございました。

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