●一山本と初対戦
幕内復帰の場所で躍動する元大関がまた一つ白星を並べ、2021年春場所以来、13場所ぶりとなる幕内での勝ち越しまであと一歩に迫った。学生時代に切磋琢磨(せっさたくま)し、親交も深い同学年の一山本を全く寄せ付けず、貫禄を見せつけた。場所前には対戦を見越して一山本のいる放駒部屋に出稽古に行っていたとし「土俵に上がれば、仲が良いとかは関係ない」と勝ちに徹する姿勢を示した。
3秒の速攻相撲だった。朝乃山自身も「正直、嫌な相手」と言う通り、得意ではない突き、押し相撲の力士が立ちはだかったが、物ともしなかった。
一山本の突きに一歩も下がらず、迫力のある攻めで圧倒。何もさせずに押し出し「しっかりと踏み込んでいた」とうなずいた。一方で最後の詰めを反省し「膝が伸びて腰高になった。修正したい」と満足していなかった。
中大から公務員を経て力士になった一山本とは近大時代に対戦経験はあるが、プロでは初対戦で「楽しみな一番だった」という。出稽古では胸を合わせており「簡単には組めなかった。(学生時代と比べ)一山本関も強くなっていて、油断できない」と気を引き締めて土俵に臨んだ。
先に入門した朝乃山がトントン拍子に番付を駆け上がる中、一山本はけがなどで出遅れた。追いかける一山本が入幕を果たしたのは、朝乃山が不祥事を起こした翌場所。対戦はかなわなかった。
春巡業では明け荷が隣同士になり土俵外で談笑する姿も見られ、元々食事に行く仲でもある。待ち望んだ初顔合わせに朝乃山は「入れ違いのような形だった。やっとここまで戻ってきて戦えた」と喜びもひとしおだった。
給金相撲の相手は21歳の北青鵬。相撲は荒削りながら身長204センチ、185キロの恵まれた体格を生かした相撲は驚異的だ。朝乃山は今年の初場所で十両の土俵で対戦し、上手投げで下しているが、幕内では初対戦となる。
成長著しい若手ホープとの対戦に向け「声援が力になっているので、恥ずかしい相撲は取れない。幕内では初顔なので、思い切ってやるだけ」と力を込めた。
●勝ち越しへ「恥ずかしい相撲取れない」 一問一答
―取組を振り返って。
立ち合いでしっかり踏み込んで、下からあてがって逃げる方向についていけた。最後、押し出した時、膝が伸びて、腰が高かったので修正したい。
―突き、押しの相手。
正直、嫌ですけど、考えると足が出なくなり、体も硬くなる。前に出る気持ちで土俵に上がりました。
―場所前に放駒部屋に出稽古に行った。
出稽古に行ったのは番付も(自分が)1枚下なので、当たると思っていた。それも含めて行きました。
―明日は北青鵬戦だ。
やるべきことは変わらない。声援が力になっていますので、恥ずかしい相撲は取れない。しっかり自分の相撲を取り切りたい。