ワカメどこへ…福井市越廼の海で深刻な海藻不漁 不安募らせる漁業者、福井県は調査へ

本来生えているはずの場所にアカモクなどの海藻がみられない越前海岸=5月12日、福井県福井市蒲生町

 福井県福井市越廼地区の海岸で今季、アカモクやワカメなど海藻類の不漁が続いている。越廼漁協によると昨季、同市茱崎町と蒲生町の海岸で取れたアカモクの加工品を約265キロ出荷したが今季は2割程度に、約2.1トンの収穫があったワカメは1割程度になる見通し。漁業者は「海の環境に何が起こっているのか。先行きが心配」と不安を募らす。一方、福井県は今夏、10年ぶりに県内沿岸部全域の藻場の面積や分布調査を行い、結果次第では原因も追究する。

 越廼漁協は2010年からアカモクを活用しようと、食用に加工し販売している。同漁協は2年前までは100キロほど出荷し、好評だったため昨年は収穫量を増やした。毎年5月上旬には茱崎漁港などの海面に肉眼で確認できるほど生い茂るという。今年はまばらにぽつぽつ生えている程度で、地元の漁師は「いつもある場所に生えていない。海藻類を餌とする生きものや藻場を産卵場所にする魚類を含め生態系にも影響があるかもしれない」と不安を口にする。

 アカモクに比べ、収穫量が多いワカメはさらに深刻な状況。蒲生町で飲食店を営み、20年以上海藻類などを収穫している枩田卓也さん(42)は「年々、越廼の海のワカメが減り、今年はこの20年間でこれだけ少ないのは記憶にない。何とか卸売先の注文分は確保したいのだが」と表情を曇らせる。

 福井県水産試験場によると、全国各地でウニなどが増え海藻を食べ尽くす「磯焼け」が広がっている。藻場は魚介類の産卵や成育に大切な存在で、漁獲高減少も招いているという。同試験場は「県内でもその傾向にあるのか、または冬場の水温が高くなることなどが原因なのか。調査結果を待ちたい」とする。調査は10年に1度、越前海岸の海藻の調査を行っており、航空写真やダイバーが実際に潜って生え具合や藻場の面積などを調べる。結果は来年2月ごろまとまるという。

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