京都・五山の送り火「鳥居形」の麓で住宅開発計画 地元「眺望損なわれる」

五山送り火の鳥居形(2013年8月16日、右京区・広沢池から撮影)

 五山の送り火の一つ「鳥居形」(京都市右京区)周辺の景観を守ろうと、地元の嵯峨鳥居本の住民らがこのほど、市に条例に基づく保全を求める提案書を提出した。鳥居形がともされる曼荼羅山(標高153メートル)の麓には、住宅開発の計画があり、送り火の眺望が損なわれる恐れがあるという。

 提案書などによると、鳥居形を望む嵯峨鳥居本六反町には農地だった場所に、2階建ての住宅10戸が建築される計画があり、既に市は開発許可を出している。開発予定地は約2300平方メートル。計画通りに住宅が建つと、地元住民らが毎年送り火を見に訪れる「まんだら橋」付近から鳥居形が見えなくなる可能性があるという。

 申請したのは大学教授や地元住民ら9人。提案書では、視界に入る景観を保全する市眺望景観創生条例に基づき、建築を制限する際の基準地点(視点場)にまんだら橋を加え、鳥居形の眺望を保全するようを求めている。提案書を手渡した鳥居本町自治会の池田英次会長(71)は「橋からの眺めは、かやぶき屋根の民家が残る昔ながらの風景。多くの住民も守るべき風景として活動に賛同している。行政と一緒に景観を守る方策を探りたい」と話した。

 同条例では、清水寺(東山区)境内の眺めなど市内49カ所の視点場が設けられている。視点場に指定されると、眺望や借景を妨げないよう周囲の建築物の高さやデザインが規制される。条例には市民からの提案制度があるが、これまで提案が実現したケースはない。

「鳥居形」の眺望保全のため提案書を提出する鳥居本町自治会の池田会長=市役所

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