社説:重いランドセル 子どもの成長を損なっては

 <赤いランドセル 背負ってか背負われてか 学校への坂道を足元ふらふら下りてゆく>

 さだまさしさんが、自分の妹をモチーフに作った歌「親父(おやじ)の一番長い日」にある。

 ピカピカの1年生たちも通学に少しは慣れた頃だろうか。それでもなお足元がおぼつかないほど、子どものランドセルがどんどん重くなっている。

 それ自体の重さは1.1~1.3キロとされる。ところが、学校用品などを手がける企業が昨年10月、小学1~3年と保護者の1200組を対象に実施した調査によると、通学中のランドセルの重さは平均4.28キロで、前年調査より0.3キロほど増えていた。10キロを超える例もあり、小学生の約9割が「重い」と回答した。

 増えた要因の一つに、専門家は新型コロナウイルスの感染拡大で、導入が進んだタブレットがあるとみる。紙とデジタルの教科書が併用されており、その過渡期であることが拍車をかけたようだ。

 これまでも「脱ゆとり教育」の流れで、全教科書のページ数が2005年度からの15年間で2倍近くも増加。サイズも大きくなり、「道徳」などの教科が増えたことも背景にある。

 もちろん、ランドセルは義務ではない。京都近辺で通学用かばんといえば、「ランリック」が有名だろう。発祥の地として特に府南部や滋賀などで定着している。

 さらに近年、軽量化を主眼に置いた開発が相次ぐ。21年にはアウトドアメーカーが、富山県立山町からの依頼で新入生向けに通学用バックパックを開発。全国発売もされ人気を呼んだ。子ども服ブランドも今年3月、国内最軽量という880グラムのランドセルを発売した。

 一方で、中身の軽量化は思うように進んでいない。文部科学省は18年、全国の自治体教育委員会に対し、子どもが教科書を教室に置いて帰る「置き勉」を認めるよう通知を出した。しかし、地域や学校によって温度差があるのが実情のようだ。先に紹介した親子調査では、4割が学校から置き勉を禁じられているという。

 教科書以外にも児童は多くの物を持たなければならない。水筒や体操着、時には鍵盤ハーモニカや給食着、図書室で借りた本。学期末には粘土や道具箱、学校で制作した作品類…。

 体に合わぬ重すぎる荷物を背負い続けることは、子どもの健やかな成長を阻害しかねない。腰痛や肩こり、通学が憂鬱(ゆううつ)になる「ランドセル症候群」も指摘される。置き勉用のロッカーやスペースを確保したり、持ち帰る日に幅を持たせたりするなどの先進事例は参考になろう。

 子どもが自宅と学校や学童保育を軽い足取りで行き来できるよう、教委や学校には配慮と工夫を求めたい。

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