ケージの掃除中、愛犬に足や腕を噛まれアザだらけ 遊んでほしいアピール? 噛む理由、対処法は…【ペットドクター相談室】

ケージのトイレの掃除をしてる時、唸りがら足を噛んできたり膝の上でガムを噛んでいたかと思うと急にスイッチが入って腕や手を噛んできます。腕はアザだらけです。遊んでほしいアピールなんでしょうか? 9ヶ月です。(ジャックラッセルテリア、コリンママさんの相談)【お答えします】福井県獣医師会 開業部会 大門動物病院(福井県福井市)大門由美子獣医師

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 ジャックラッセルテリアは、筋肉質な体とやや短い脚を持ち、非常に愛らしい外観の小型の犬です。家庭犬としても家族と良い関係を築ける性質を持ちます。ただ、作り出された目的がネズミを捕獲して殺すというものであり、「動くものを追って噛む」という基本的な性質を強く持ちます。また、馬と一緒に走り狐を追うために作られた近縁種が存在し、その子たちとほぼ同等の能力もあります。

掃除中の噛み癖をやめさせる方法は?

 ジャックラッセルテリアを家族として迎える場合、十分な運動をさせ沢山噛ませるという犬種特性を満足させる必要があります。

 十分な運動は、例えば20mのロングリードを付けて、誰もいない早朝の公園や、広いお庭などで力いっぱい走らせます。この時、一緒に走れれば良いのですが、誰もがオリンピアンのようなアスリートではありませんので、声をかけたりボールを投げたり、時には呼び寄せたりしながら、一緒の時間を十分に過ごします。

 梅雨や猛暑、厳冬の時期など、屋外での活動が難しい時期の対策も考えねばなりません。走り出す前に数秒の「マテ」をかけ、走り出す許可を出し(合図:例えば「ゴー」など)てから走らせます。「マテ」がまだできない場合は、リードを短く持って合図とともに緩めます。名前を呼んで呼び寄せてその子が一番喜ぶことをして褒め(数秒)、再び「マテ」「ゴー」と声をかけて走らせます。

 ボールが好きなら(例えばテニスボールなど)沢山用意して、持ってこなくても、持ってきてこちらに渡してくれなくても、手元のものを次々に「ボール!」と言って投げます。「持ってきて」「テイク」「ちょうだい」「オフ」など、簡単な普段使わない言葉をコマンドとして練習し、一緒にボールを使って遊びます。犬が疲れて動かなくなるまでやってはいけません。常に水と少量のご褒美などを用意しておき、「まだもう少し走りたい」と思っているくらいでやめます。

 この終了の判断は必ず飼い主側から行ってください。噛むことについては、硬くて噛み切れないけれど大好きなものを探さねばなりません。時には歯に良くないものも使う必要もでてくるかもしれません。一定の時間が来たらこちらに渡してもらう必要がありますので、咥えているものを渡してもらう練習も必要になってきますが、これはなかなか文章で書くことが難しいです。

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コツは「繰り返し」

 たいていの飼い主さんにとっては難しいことかもしれませんが、コツは、口から出して飼い主に渡してもすぐに返してくれる、またそれを投げてくれる、などの報酬があると犬に理解してもらうことです。何度も咥えさせる、放す、を繰り返していきます。

 犬にとって嬉しいことは「何を言っているかお互いに理解できる=安心した環境、相手と暮らしている」と体感できることです。犬にとってのコマンド(指示)は記号です。言葉をいくつも言ってはいけません。短い単語でボディランゲージは大げさにメリハリをつけて、犬と相対してください。

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避妊去勢も対処法の一つ

 ご質問の飼い主さんはもうすでに去勢手術は終えられていると思います。去勢すると、少しこちらの言う言葉に耳を傾けてくれるようになります。犬が行動を起こす理由の一つで、人間はどうしても満足させられないものである「生殖の欲求」についてのストレスを無くしてあげることができます。

 家族として暮らす犬の福祉を考慮すると、避妊去勢は当然のことと考えます。実際、寿命も避妊去勢していない子に比べて2年ほど伸びると言われています。ご相談の子はまだ9か月とのことで、これからますますパワフルになってきます。飼い主さんを噛むことで会話している(遊んでいる)、と勘違いしているようですので、それよりもっと面白いことがあるよ、と教えてあげてください。

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トイレを片付ける時は…

 トイレを片付けるときには、他の家族に散歩に連れ出してもらう、この時だけとっておきの噛む好きなものがもらえる(それを噛んでいれば、同時に飼い主さんの足は噛めないので)などして、あれこれ声をかけたり、振り払ったりしなくて良いようにしてください。

 足を噛まれたヒトが反応(ダメと言ったりすること)することが犬には「もっと噛んでみて!」と聞こえています。また、お膝にのせてゆっくりしているのはいいものですけれど、そこで噛んで遊ぶのはやめましょう。犬が困った行動をしたとき、犬に直接触れたり声をかけるのは、その行動を強化している、全く逆の対応だと、心してください。

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犬が抱く感情、希望、欲求をじっくり考えて

 犬と遊ぶ、というと何をしてよいかわからない方は結構おられます。犬ですけれど、感情があり希望(欲求)もあります。常に自分は何をすればよいか、何をすれば飼い主が喜ぶか(たとえダメと叫ばれても嬉しい)、周りが平穏であるか、ということに心を砕いています。

 頑張らなくっても大丈夫かな、と思えるまで頑張り続けます。ジャックラッセルテリアは、スタミナもある頑張り屋さんですので、飼い主さんは一歩引いて、自分の犬が何を考えているか、どうかじっくり考えてみてください。これから十数年続く暮らしが、飼い主さんにとっても犬にとっても楽しい日々でありますように。

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