朝乃山に土 勝ち越しへ「欲が出た」

 大相撲夏場所(両国国技館)8日目の21日、東前頭14枚目の朝乃山(富山市呉羽町出身、富山商高OB、高砂部屋)は、同11枚目の北青鵬(宮城野部屋)の下手投げに屈し、初黒星を喫した。連勝が止まり、ストレートでの勝ち越しはならず「それが頭の片隅にあった。その欲が少し出てしまった」と悔しさをにじませた。

 立ち合いで、身長204センチの幕内最長身である北青鵬が左に飛ぶと、朝乃山の思考が一瞬止まった。「予想していなかった」。それでもすぐに対応し、右四つで左上手を引くが、相手にも深い上手を許す。

 「あの身長なので取られたら苦しい。先に攻めようというのがあった」。焦りから腰が伸び、上手の引きつけも甘い。相手の上手を切らずに寄った攻めは雑だった。朝乃山の上体が浮いたところで、投げを食らい、背中にはべったりと土がついた。「昔から指摘されているように、上手を切らなければいけなかった。寄り方も下手くそだった」と反省した。

 初場所の十両土俵で朝乃山に敗れて「ずっと悔しかった」という北青鵬は、入念に作戦を立てて土俵に臨み「想定通りいけた。成長できた」と手応えを口にしていた。

 NHKのテレビ解説を務めた元横綱白鵬の宮城野親方は、朝乃山は上手を切るか、もろ差しにいくべきだったとし「悪いところは無理に体を預けて、前に出ていく。一呼吸置いて、落ち着いて攻めていくのが大事」と指摘した。

 9日目の22日は東前頭10枚目の竜電(高田川部屋)と対戦する。朝乃山は後半戦に向け「切り替えるしかない。一つ負けて、明日からまた自信持って、自分の相撲を取っていきたい」と前を向いた。

  ●表情に気落ちなく

 幕内に復帰してから初めての黒星を喫した後、取材に応じた朝乃山の表情に、それほど気落ちした感じはなかった。十両や幕下では「負けられない」という重圧から、敗戦後に取材に応じる朝乃山の表情には「悔しい」「情けない」「なぜ負けたのか」という思いが表れていた。

 後半戦に向けての意気込みを問われた朝乃山は「うーん」と少し考えた後、力の抜けた笑みを漏らし「頑張ります」とだけ答えた。敗れた力士を取材する際は神経を使うだけに、記者たちも少し緊張が解けた。

 「験直しに行きますか」と問われた朝乃山は苦笑しながら「日曜なのでどこもやってません」と一言。しっかりと反省した後は、気持ちを切り替えるしかない。最後は黒星を吹っ切るかのような大きな声で「あざっした」と頭を下げ、国技館を引き揚げた。

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