闇バイト勧誘 狙われる友人・知人 指示役 身元把握、関与を強制

指示役との電話番号交換が、闇バイトのきっかけだったという男(公判中)=ひたちなか市内

交流サイト(SNS)などで高額報酬をうたって犯罪に関与させる「闇バイト」。名前も知らない「仲間」とニセ電話詐欺などに手を染めるグループが存在する一方、茨城県内では友人や後輩など交友関係が悪用されて犯罪グループへ引き込まれるケースが少なくない。犯行の指示役が身元を把握しやすいためとみられ、不特定多数を対象にしたSNSと並び、勧誘の主な手口になっている。

■「短時間で高収入」

闇バイトは、「簡単な仕事で、短時間で高収入」などとうたい、応募してきた人を脅して、ニセ電話詐欺や強盗などさまざまな犯罪の実行犯として利用する。各地で相次いだ広域強盗事件では、実行役の多くはインターネット上の闇バイトに応募して集まり、「ルフィ」などと名乗る指示役から犯行の指示を受けていたとみられている。

こうした状況は県内でも同様だ。県警ニセ電話詐欺対策室によると、ニセ電話詐欺事件で昨年摘発した36人のうち、犯行に及んだきっかけがSNSとなったのは半数の18人に上った。

水戸地裁土浦支部では今月9日、ニセ電話詐欺の受け子役で逮捕、起訴された男(27)の初公判があり、検察側は犯行動機を「個人情報を知られている恐怖心と、お金が欲しい気持ち」と指摘。勤め先の賃金は未払いだったという。

■脅されて犯行決意

SNSを通した闇バイトに注目が集まる半面、県内では、犯罪の指示役が地元の友人や先輩後輩など、特定の交友関係を狙うケースが目立っている。同対策室によると、同年摘発した17人は「友人・知人の紹介」で事件に関与しており、SNS契機に犯行に及んだ人数とほぼ変わらない。地元の知人を紹介させれば、指示役が自宅や家族構成、職場などを把握しやすくなるためとみられる。

ニセ電話詐欺事件のリクルーター役を務めて詐欺罪に問われ、現在は水戸地裁で公判中の男(25)=保釈中=は昨年春、水戸市の繁華街で、知人から紹介された「地元の先輩」と連絡先を交換。この先輩が指示役だった。

男はその後、指示役から「強盗で稼げる。誰かいたら紹介して」と打診を受け、金に困っていた友人を紹介した。しかし、犯行当日に友人の行方が分からなくなるトラブルが発生。男は、見つかった友人とともに指示役へ迷惑料100万円を支払った。

指示役はその後も、友人にニセ電話詐欺の受け子を打診。男は制止したが、指示役から「紹介した責任を負え。組織の人間が動くぞ」と脅されたという。

男は家族と暮らす自宅を指示役に知られており、報復を恐れ、一転して友人に「やるしかないよ」と犯行を催促。友人はその後、茨城県などで少なくとも3件のニセ電話詐欺事件に関与。友人のほか、男と指示役も逮捕された。

■難しい「関係断絶」

捜査関係者は、交友関係を悪用した闇バイト募集について「SNSで応募する人より、地元の(後輩や知人の)方が身元がはっきりしていて、脅しやすいのではないか」と分析する。

同室は「一度関わると関係を断ち切るのは難しい。既に応募した本人や家族は警察に相談してほしい」としている。

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