兼六園下にホテル 北陸会館改修 脱コロナ、需要見込む

ホテルに改修されるビル「北陸会館」=金沢市兼六元町

  ●来年春から夏の開業計画

 金沢市の兼六園下交差点の一角に位置するビル「北陸会館」が、ホテルとして再整備されることが22日までに分かった。都内のゼネコンが大規模改修を手掛け、来年春から夏にかけて開業する見通し。新型コロナの「5類」移行に伴って入り込みが復活する中、隣接する兼六園をはじめ、多くの観光スポットに近い立地を生かして県外客の宿泊ニーズを取り込む。

 兼六元町にある北陸会館は地下1階、地上6階建てで、延べ床面積約1250平方メートル。石川や富山などに本社を置く私鉄バスの労働組合が1966(昭和41)年に設立し、これまでに北陸鉄道(金沢市)の労組や飲食店などが入居していた。

 今年で築57年となるビルは老朽化が進み、改修に合わせてホテルとすることになった。テナントは既に退去済みで、西松建設(東京)が工事を手掛け、ホテルの運営は別の企業に委託する。

 計画によると、現在のビルの構造は残したまま、今秋から耐震工事や設備の入れ替え、内装工事を順次進める。客室は広い空間を確保するために15~20室にしぼる。ホテルのブランドは未定で、1階はテナントとして貸し出すことも想定しているという。

 県内は、2020年以降、コロナの影響で宿泊者数の落ち込みが続いたが、5類移行を受けて足元の入り込みは回復。県のまとめによると、5月の大型連休中(4月29日~5月7日)の宿泊予約は、後半を中心に多くのホテルや旅館で80%を超え、3、4日は95%以上となるケースもあった。

 西松建設は、21年にも金沢市片町1丁目にあるオフィスビルをホテルに改修している。同社の担当者は「一時期に比べてコロナが落ち着き、金沢はさらに宿泊需要が見込める。兼六元町は観光地が近いホテル向きの好立地だ」と話した。

  ●〈視点〉県内、開発熱再燃 供給過剰に懸念の声

 世の中の「脱コロナ」が進むにつれ、石川県内では宿泊施設の開発や開業に向けた動きが再び活発化してきた。北陸会館に加え、金沢市高岡町の旧「つる幸」は高級旅館として再生する計画がスタート。小松駅前では空き物件を改装して「地域分散型ホテル」とする構想が進む。

 2015年3月の北陸新幹線金沢開業に前後し、県内では金沢を中心にホテル開発が進んだ。しかし、コロナの感染が広がると、状況は一変。事業者は建設計画を白紙にしたり、ホテル用に取得した土地にマンションを建築したりして宿泊需要の落ち込みに対応した。

 不動産関係者によると、来年春の北陸新幹線県内全線開業を見据え、金沢市内ではホテル用地を探す事業者が目立っている。開発の動きはにぎわい復活の証しだが、地元の都市型ホテル関係者からは「増えすぎると価格競争が激しくなる」との声も。供給過剰のリスクをはらんだ建設ラッシュに対しては、警戒ムードも高まっている。(経済部・室屋祐太)

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