加害男性へ 遺族の「なぜ」に答えて 神戸連続児童殺傷事件26年 土師守さんの手記全文

土師守さん

 1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件で、小学6年の土師淳(はせじゅん)君=当時(11)=が亡くなってから、24日で26年となるのに合わせ、父親の守さん(67)が報道各社の求めに応じて手記を寄せた。当時14歳で逮捕された加害男性に改めて遺族らの問いに答えるよう求め、事件記録が廃棄された問題では、裁判所に再発防止を強く訴えた。全文は次の通り。(篠原拓真)

 今年の5月24日は、私たちの次男の26回目の命日になります。何年経とうとも、亡くなった子供への私たちの想いは変わることはありません。

 加害男性からの手紙は、今年も届いていません。なぜ、私たちの次男の命が奪われなければいけなかったのかという問いを、私たちは以前から発し続けています。加害男性は、私たちの問いに答える義務があると思いますし、答えてほしいと思っています。

 昨年10月に神戸連続児童殺傷事件の事件記録が廃棄されていたことが明らかになりました。重要事件の事件記録は永久保存にするという最高裁の内規があるにもかかわらず、内規を考慮することもなく廃棄するという行為は、通常の組織ではあり得ないことです。遺族の事件記録を閲覧したいという思いをないがしろにするような行為は、絶対に許されるようなことではないと思います。なぜ、このようなことが起こったかということをきちんと調査し、それに対する対策を施したうえで、確実な記録保存の手順を確立することが重要だと思います。

 兵庫県では、犯罪被害者支援条例の制定については、他府県に後れを取っていましたが、斎藤知事が就任されてから条例制定の話が進み、昨年7月から犯罪被害者等支援条例検討委員会が開催され、今年3月16日に県議会で可決され、3月22日に公布されました。条例の制定は遅れましたが、非常に優れた内容になっており、全国で初めて被害者の権利保護をうたった条例です。兵庫県民のセーフティーネットの一つとして重要な柱になるものと思います。

 昨年3月に「新あすの会」が、立ち遅れている犯罪被害者への経済補償の改善を求めて活動を開始しました。上川陽子元法務大臣をはじめとする犯罪被害者等保護・支援体制の一層の推進を図るPT(プロジェクトチーム)が提言案をまとめ、4月13日に司法制度調査会に提出の運びとなりました。今後の経過を慎重に見極めていく必要がありますが、犯罪被害者への経済補償の大幅な改善策がまとまることを期待しているところです。

 今後も、犯罪被害者を取り巻く環境が改善され、一般の方々の理解が進んでいくことを願っています。

令和5年5月24日 土師 守

© 株式会社神戸新聞社