メイク需要が追い風に!進む“脱マスク”で恩恵を受ける黒子企業とは

日経平均株価は、バブル後の高値を33年ぶりに上抜けて31,000円台に乗せてきました。上昇の要因は、下記が考えられます。

  • カリスマ投資家であるバフェット氏が日本株に好意的な発言をしたこと
  • PBR1倍割れ銘柄に対する東証の改善要求により、日本企業が株価上昇を意識し始めたこと
  • しばらくは日本の金融緩和政策が続きそうであること
  • 期待以上に日本の存在感をアピールできた広島サミット
  • インフレ高止まり、金融不安を抱えた欧米に比べて安心感があること
  • 国内外から半導体関連に関する投資が活発化していること

これらに加えて、各国に遅れてやってきた“脱マスク”の効果もかなり大きいと思っています。というのも、マスク着用が個人の判断に委ねられてから、しばらくはまだまだマスク着用者が圧倒的に多かったものの、ゴールデンウィークを挟んだのちは、徐々にノーマスク派が増加しています。

わたしは真っ先にマスクなしの生活を堪能しておりますが、なんと清々しいことか。制限なしに行きたいところへ外出できる開放感を存分に味わえる−−そんな気持ちの昂揚が、日本景気を明るくしていることは間違いありません。うっかりお財布のヒモもゆるくなっていることでしょう。


日本を代表するビューティー企業が好調

さて、“脱マスク”で潤う業界といえば、いちばんに思い浮かぶのはメイク関連です。久しぶりに人前で顔全体を披露するのですから、美しく整えておきたいですよね。そこで日本を代表するビューティーカンパニー・資生堂(4911)の直近の決算で、脱マスク効果を確認してみます。

5月12日(金)に発表された2023年12月期第1四半期決算は、①売上高2,400億円、②実質前年同期比+6.6%、③コア営業利益125億円、④前年同期比+186.3%と大幅な伸びを示しています。

画像:資生堂「2023年 第1四半期実績」より引用

増収の要因としては、⑤日本は堅調な高価格帯を中心に拡大傾向、とあります。増益の要因は、⑥売上増に伴う粗利増および機動的なコストマネジメントの継続により増益、とのこと。

ちなみにコア営業利益は、営業利益から構造改革に伴う費用・減損損失等、非計常的な要因により発生した損益を除いたものです。同社は、IFRS(国際財務報告基準)を採用していますので、日本の会計基準で計上される特別利益や特別損失は、営業利益に反映されます。そのため、特殊な事情が分かりづらいという配慮から、コア営業利益を表記しているようです。

伸びているのは?

ブランド別の売上高を見ると、おもしろいことが分かります。

画像:資生堂「2023年 第1四半期実績」より引用

資料にも書かれているように、グローバルブランド「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」「NARS」「Drunk Elephant」の売上伸びが堅調で、「イプサ」など国内ブランドは、いまいちパッとしません。

国別の売上高推移を見ると、日本はコロナ前の2019年度と比べると①ー32%とまだまだ届いていません。前年(2022年)同期比でみると+8%なので、やっと回復のスタートを切ったところでしょうか。そういった意味では、脱マスク効果が期待できるのは、第2四半期以降になりそうです。

画像:資生堂「2023年 第1四半期実績」より引用

それと比べてコロナ前の売上を完全に回復し、むしろそれ以上に伸ばしているのが欧米エリア。これぞグローバルビューティ企業の貫禄です。好調なブランドは、どれも高価格帯のもので、世界的にアフターコロナではいち早く富裕層向けビジネスが回復を見せたことと一致します。

画像:資生堂「2022年 第1四半期実績」より引用

ちょうど一年前の2022年12月の第1四半期決算のブランド別売上高を見ると、ここでもじつは「クレ・ド・ポー ボーテ」「NARS」はプラスとなっています。残念ながら、わたし自身はどちらも使用したことないので、調べてみたところ「クレ・ド・ポー ボーテ」の美容液は1本35,200円(税込)とありました。高級な美容液を使っている方は、コロナ禍で外出せずとも、つねに美しさを保つために使い続けているのでしょうか。ついつい外に出ないと手抜きになってしまうわたしのスキンケアを恥じてしまいます。

一方のNARSはアメリカ発のメイクブランドですが、2000年に資生堂が買収。こちらはやはり、アメリカでの売上比率が高いようです。もうひとつ興味深いのは、フレグランスにおいては、ウィズコロナ、アフターコロナどちらにおいても堅調であることです。ヨーロッパでの売上が牽引しているそうで、つねに香りを身に纏う優雅な文化を感じますね。

決算発表で見つけた脱マスクの黒子企業

資生堂ほか、コーセー(4922)やポーラ・オルビスHD(4927)など、脱マスクで恩恵を受けそうな化粧品会社の日本での売上回復は、まだ序盤といったところですが、当然、今後の需要拡大に向けて、製造量を増加していると思われます。

そこで発見したのが、脱マスクでのメイク需要を支える黒子企業です。日本色材工業研究所(4920)というお堅い名前ですが、リップやマスカラなどの化粧品をOEMで生産する企業です。

直近4月12日(水)に発表された2023年2月期本決算説明資料に「国内・海外化粧品メーカー各社からの受注に回復の動きがあることから、売上高は前期比32.3%増」とあります。

また、会社四季報春号の記事欄にも「24年2月期はマスク緩和追い風に口元回りのメイクが需要増」と書かれていますので、これは脱マスク関連銘柄であることは疑いようがありません。時価総額が34億円と極めて小粒ですし、BtoBビジネスのため、わたしたち消費者が直接知る機会はありませんが、もしかしたら普段使っているリップも、同社で作っているものかもしれません。

時価総額2.7兆円の資生堂と、会社規模はかけ離れていますが、日本の高品質化粧品を支える縁の下の力持ちです。株価は週足できれいな上昇トレンド形成中。

画像:TradingViewより

完全脱マスク社会に向けて進むなか、今後の動向をひそかに注目している銘柄です。

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