ドメニカリCEO、F1の問題点を提起するドライバーたちに対し「利己的にならず、広い視野で見る必要がある」

 F1のステファノ・ドメニカリCEOは、F1ドライバーは“自分勝手な”こだわりを捨て、F1の発展のために一歩下がってより広い視野で物事を考える必要があると語った。

 ドメニカリのリーダーシップのもと、F1はこれまでにないほどの成長を見せている。スポーツの面では新たな層における人気が急上昇しており、ビジネスという意味でも10チームすべてが大きな利益を上げている。

 しかし最近、多くのドライバーたちが行った発言から、いくつかの問題が注目を集めている。

 先月のアゼルバイジャンGPでオーバーテイクの機会が限られていたことについて、グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション(GPDA)の理事を務めるジョージ・ラッセルや2度のF1世界王者マックス・フェルスタッペンは、現行のF1マシンは再びオーバーテイクの機会を減らす方向に進んでおり、憂慮せざるを得ないとの考えを示した。

 ラッセルによると、GPDAはこの問題をF1およびFIAとできる限り早い時期に話し合う意志を固めているという。

 さらに、マイアミではレース前の賑やかなドライバー紹介セレモニーは、ルイス・ハミルトンを除くF1ドライバーたちに不評だった。“集中を妨げる”上に、炎天下にフル装備で30分も立たされることが負担だとの意見が多数みられた。

2023年F1第5戦マイアミGP ドライバー紹介セレモニーでの周冠宇(アルファロメオ)

 もうひとつ、今シーズンは6回の実施が予定されているF1スプリントの導入に関して、ドライバーの間で評価が分かれている。フェルスタッペンは、スプリント・フォーマットには批判的で、今後さらにスプリントの実施回数が増えるようであれば、F1での将来を考え直す必要があるとまで発言している。

『デイリー・メール』のインタビューでドメニカリは、全体で見ればF1にとって良い効果をもたらしているこれらの“変化”に対するドライバーらの見解を批判し、より大きな視野で物事を見るように促した。

「言いたいことが言えない社会にはしたくない」とドメニカリは発言した。「しかし時としてドライバーたちは、自分たちがより大きな構図の一部であることを忘れないでいる必要がある」

「自分勝手に振る舞う必要はない。ドライバーはF1というスポーツ、そしてビジネスの一部であり、F1が発展しているのは我々がより大きな視野で考えているからだ」

「居心地のよい場所からあえて踏み出すことは楽ではないが、気を抜いて、現状維持で満足していてはだめだ。スプリントウイークエンドのフォーマットの詳細について、予定の6回を実施した後、シーズン末に見直しを行うこともできる。スプリントを毎週末実施するつもりはない」

「しかし新しい観客層が増えている。観客が支払った金額に値する満足をセッション毎に提供する必要がある。エンジニアやドライバーの満足だけを考えて、コースを周回していればよいということにはならないのだ」

ステファノ・ドメニカリ(F1 CEO)

 F1の発展する方向が意に添わなければF1を離れるかもしれないとフェルスタッペンは警告しているが、ドメニカリは、自分よりもフェルスタッペンの方がF1の世界に長く留まる可能性が高いと考えている。

「問題についてマックスと話し合った」とドメニカリは述べた。「彼はF1が好きで、自分の仕事も好きだと話していた」

「彼はF1世界王者で3度目のタイトルを目指して戦っている。彼はF1の申し子であり、私よりも長く留まるだろう。何も心配することはない」

© 株式会社三栄