市町村に新たな負担も? 各候補の「子育て費無償化」公約に戸惑いの声 青森県知事選

 6月4日投開票の知事選では、各候補者が学校給食費、医療費、保育料など子育てに関する経費の無償化を政策・公約に掲げている。少子化や人口減少の対策につながる主要施策の一つだが、現時点で実現のための財源は明確ではない。政策・公約が実行に移された場合、新たな支出が必要になるかもしれない市町村からは、戸惑いの声も漏れる。

 県教育委員会によると、今年2月時点で学校給食費を無償化しているのは17市町村(個別の自治体名は非公表)。財源に新型コロナウイルスや物価高騰に関する国の交付金を充てる市町村が見られるが、現時点で県による財政支援はない。

 「安定的な財源の確保が課題で、今現在実現は難しい」。昨年12月の八戸市議会一般質問の答弁で、熊谷雄一市長は給食費無償化は財政的なハードルが高いとの認識を示した。同市の場合、無償化には年間約8億5千万円を要する。市の財政担当者は「他の支出を絞って財源を捻出するしかないが、その方法は見いだせていない」と実情を語る。

 弘前市も給食費無償化の財源確保は厳しい-との立場だ。無償化には約5億8千万円が必要で、同市担当者は「仮に県と費用を分け合うとしても、毎年続けるのは相当な負担」と話す。

 一方で18歳までの子ども医療費は多くの市町村が独自に無償化を進めている。4月1日現在の県のまとめによると、中学生までは全40市町村が自己負担ゼロを実現し、高校生も27市町村が無償化(うち2市は入院のみ)しているが、所得制限の有無などの違いがある。一律で無償化するには、現行の助成事業との調整が必要になる。

 政府は「次元の異なる少子化対策」の試案で▽給食費無償化へ課題整理▽子ども医療費を助成する自治体の負担軽減-などを検討項目に挙げている。

 知事選候補者4人の中で、子育て費用を広く無償化するとしているのは宮下宗一郎氏(44)と小野寺晃彦氏(47)の2人。財源について宮下氏は「国の支援策が今後決まると思う。国の財源を頼りにスタートさせる」、小野寺氏は「国の支援をうまく取り込みながら、国、県、市町村でしっかり組み合わせをつくりたい」としている。

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