父の姿追い「ほふく救出」出場 山田消防署の上野みなみさん

ほふく救出種目に挑戦する上野みなみさん(左)と荒田那菜さん。上野さんは亡き父への思いも胸に人命救助の技術を磨く=宮古市五月町

 父の意思を継ぎ、人命救助の技術を磨く-。山田消防署の上野みなみさん(25)は、26日に宮古市で開催される宮古地区消防救助技術選考会の「ほふく救出」種目に出場する。消防士で6年前に殉職した父もかつて取り組んでいた種目。宮古消防署新里分署の荒田那菜さん(21)と女性消防士のペアとして初挑戦し「要救助者も自分の命も守る技術を高める」と真っすぐ前を向く。

 選考会の合同訓練が始まったのは8日。上野さんは不思議な巡り合わせを感じていた。6年前のこの日、強風に襲われた宮古市で、宮古消防署に勤めていた父達也さん=当時(42)=は、風でめくれた屋根を固定する作業中に建物から転落。命を落とした。

 当時、大学生だった上野さんは、幼少時から憧れていた仕事に父を奪われたような深い悲しみに襲われたが、実家を訪れた達也さんの同期が思い出を話してくれ、心が癒やされた。

 ほふく救出は、達也さんが東北大会に出場したことがある種目だ。「女性ペアでどこまでできるか挑戦したい」という上野さんの提案に、荒田さんは「お父さんへの思いがあると分かっていた。同期の自分がやるしかない」と応じた。

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