倒壊の鳥居、公費で撤去 珠洲市、国の補助金活用

地震で倒壊した鳥居=5日、珠洲市蛸島町の高倉彦神社

 最大震度6強の地震に見舞われた珠洲市は25日までに、倒壊した神社の鳥居や寺の鐘撞(かねつ)き堂などを公費で撤去する方針を決めた。市は国の補助金を活用し、全壊した家屋を公費で解体しており、神社や寺の施設も同様の対応が可能との国の見解が示されたため。神社や寺の関係者からは「自前での撤去は費用が大きく、ありがたい」との声が上がっている。

 県神社庁の25日時点のまとめでは、5日の地震で珠洲市内の28社で鳥居や手水舎、灯籠、こま犬などが倒壊した。鳥居は根元から折れ、倒れた衝撃で割れてしまって処分せざるを得ない。日蓮(にちれん)宗本住寺(正院町正院)では江戸時代に建てられたという鐘楼堂の柱が折れ、屋根が落ちた。

 鳥居や鐘撞き堂は大型のものが多く、撤去費も高額になることが想定される。市は倒壊した鳥居や鐘撞き堂、全壊の建屋についても環境省の補助金を使えることを確認。復興に向けて、少しでも寺社、氏子、檀家(だんか)の負担を減らす方向だ。

 撤去前に市役所で手続きし、被災証明を受ける必要がある。既に撤去した場合は処分前の写真や領収証などがあれば、市が対象額を支払う。

 市によると、憲法は地方自治体が宗教的に中立であることを求める政教分離を定めているが、倒壊した鳥居などの撤去を公費で賄うことは可能だという。

 地震で鳥居と灯籠が壊れた高倉彦神社(蛸島町)の櫻井重祝(しげとき)宮司は「鳥居は街のシンボル。氏子は自宅の修復にもお金がかかる。市の施策によって再建に必要な負担が減ることは非常にありがたい」と話した。

  ●非住家被害が11棟増

 県は25日、珠洲市付近を震源とする地震の建物被害について、非住家の被害が11棟増の85棟、住宅の一部破損が8棟減の661棟になったと発表した。

  ●共産が地震で要望

 共産党能登地区委員会の鈴木宏太委員長は25日、珠洲市に地震被害に関する要望書を提出し、中小零細事業者への支援強化などを求めた。鐙史朗輪島市議が同行した。

© 株式会社北國新聞社