●富大の医師派遣困難
高岡市民病院は2024年度から、産科を休止する。産科医不足などで富大から派遣を受けられなくなるためで、現在の産婦人科を婦人科のみの体制に移行する。出産は来年2月ごろまで受け入れる予定で、それ以降は他に産婦人科のある市内の五つの医療機関に受け入れを要請する。市民病院側は「市民に影響がないように努める」としている。
25日の市議会民生病院常任委員会で市民病院の薮下和久院長が報告した。
市民病院の産婦人科は現在、富大から医師2人の派遣を受け、5人体制となっている。薮下院長は「全国的に産科医が不足する中、本院に医師を派遣している大学の医局も同様の状況にあり、来年度から派遣はできないとの説明があった」と述べた。
薮下院長は「大学には引き続き医師の派遣を要請していく」と述べ、産科再開の可能性を残したが、分娩件数の少なさも課題だという。残る3人のうち1人も産科がある病院での勤務を希望している。
市民病院での出産は19年度に127件だったが、コロナ禍もあって20年度は108件、21年度は105件と推移。22年度は産科中心の「ウィメンズ病棟」を整備したこともあり143件に増加したが、「市内の他の医療機関は200~300件で、400件近い民間クリニックもある」(薮下院長)のが実情だ。
産科の休止は病院会計にも打撃で約1億円の減収が見込まれ、病院側はウィメンズ病棟での若い女性患者の受け入れ強化、産後ケアの充実を図っていく。
県医務課によると、自治体や公的団体が運営する「公的病院」は県西部に11病院あり、高岡市民病院が産科を休止すると、対応できるのは県済生会高岡、厚生連高岡、市立砺波総合の3病院となる。
県内では昨年9月に「かみいち総合病院」が分娩業務を休止している。
●イメージ低下懸念
高岡市民病院が来年度から産科を休止することを受け、一部の市民からは困惑の声が上がり、市のイメージ低下を危惧する意見も聞かれた。
会社員女性(27)は「身近な市民病院で産科が無くなれば不安を感じる妊婦も出てくるのではないか」と少子化に影響が出ることを懸念した。
50代男性は「医師不足なのでどうしようもないが、国が異次元の少子化対策という流れの中で、高岡のイメージが悪くなる」と腕組みした。
●市長「非常に残念」
角田悠紀市長は25日、「病棟を改修し、無痛分娩に取り組むなどして分娩数が前年度比で約1.5倍に増加した中で、来年度から産科を休止せざるを得ない状況になったことは非常に残念だ」とするコメントを発表した。
市民病院での出産希望者に対し「大変申し訳ない」と陳謝。一方、市内で出産できなくなる事態にはならないとし、産科がある市内医療機関への妊婦受け入れ要請に努力するとした。