給与に休暇、懲戒も…職場で確認しておくべき【就業規則】のポイント

会社員の方は、お勤めになっている会社の就業規則をご覧になったことはありますか?

私は就業初日に、「今日はこれを読んでおくように」と就業規則を渡されたので、何が重要かなど特に意識もせずに、パラパラと紙をめくって読んだ記憶があります。内容については、それほどしっかり把握していなかっただろうな、といまでは思います。

それでも一読しているだけ、まだいいのかもしれません。なかには、就業規則を配布されたり社員専用サイトから確認しておくようにと言われてはいても、目を通していない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

確かに、就職した後でないと見る機会のない就業規則ですから、「もう入社したし、いまさら確認してもな……」と思ってしまうのもわからなくはないです。

私が退職手続きの代理業務を行っている際、就業規則の内容を把握していなかったり、何処にあるかもわかっていなかったり、という方が実は少なくないです。

就業規則の中には、給料に関すること、休日に関すること、賞罰に関することといった、ご自身が会社に対して守らないといけない事、ご自身の会社に対する権利など、知っておくべき事が記載されていますから、その内容は入社後であってもしっかりと確認することが必要です。

今回は弁護士である筆者の視点から、各種規則の中で、これは特に注意しておいて欲しい内容をピックアップしていきます。


給与に関する規定

給与に関する規定の中には、給与の算定方法、昇給に関する規定、ボーナス算定方法、ボーナス算定の基準となる時期、退職金に関する規定、退職金の算定方法といった、会社から支払われるお金に関する内容が記載されています。給与の中には、基本給、各種手当、みなし残業代など、いろいろな項目が含まれています。自分がどういった項目について支払いを受けられるのか、把握しておくことは大切です。

基本給は、有給休暇の時に支払われる給与の額、残業代の計算、ボーナスや退職金の計算などに関係してきます。募集要項に記載されていた給与には、みなし残業代や手当が含まれている状態で記載されていることもあります。みなし残業代が含まれている場合、それが何時間分なのかも確認しておくべきです。

ボーナスや退職金は、支払うことを定めた規定がなければ、会社に支払う義務が発生しません。「業績によって支払うことがある」といった記載で、過去に支払いが行われていな会社の場合、基本的には会社に支払う意思がないと考えられます。

また、ボーナスについては何月何日時点在籍社員、退職金については何年以上在籍社員といった時期的な制限がついていることがあります。入社早々、退職のタイミングを考えている方はいらっしゃらないと思いますが、もしも退職するというタイミングでは、近くこの時期的な条件を満たさないのか確認をすることはとても大切です。

休日に関する規定

有給休暇、休職制度、特別休暇、介護休暇、育児休暇、産前産後休暇、生理休暇と、休日の種類はさまざまです。もちろん、会社によってどういった種類の休暇を設けているかは異なりますので、まずはご自身の会社がどういった種類の休日を設けているかを知っておくことが大切です。

有給休暇については、規定の日数働いていれば法律上、当然に労働者に認められている権利になりますから、有給休暇に関する規定が就業規則などに定められていなくても、権利行使することができます。

昨今では、法律が改正されて、年5日は有給休暇を取得させる義務が会社にあります。「うち有給休暇規定を置いていないから、有給休暇なんて取らせないよ」という会社は殆どないと思いますが、社員のほうが勘違いをして有給休暇がない会社と誤解しているケースには遭遇したことがあります。

また、有給休暇は取得する際に、理由を伝える必要や、会社の許可は必要ないのが原則です。最近話題になることが多い、「人気のゲーム発売日に、ゲームをしたいので有給休暇をとる」というのも、全く問題ないことになります。

さらに、有給休暇の取得時期について、会社は就業規則内に「この時期は控えてくれ」ということを定めていなければ、申請された有給休暇の取得を認めないという扱いをすることはできません。もちろん、集団生活の中でその意思を貫く方が生きにくいという側面はあると思いますが、知識としては知っておいて損はないはずです。

有給休暇はどんな理由なのかにとらわれず、いつでも取得できる休暇だからこそ、「ここぞ」というタイミングで上手に使えるようにしていきたいですよね。有給休暇以外の休職制度、特別休暇などの休暇の種類が設けられていることをしっかり把握していれば、有給休暇を消費せずに休暇を取得できるケースがあるかもしれません。

さらに、有給休暇は使い切れない分は翌年に持ち越せますから、その点もやはりとても貴重な休暇ではないかと思います。なお有給休暇についても、加算する基準日を会社が設定していることがありますので、この基準日がある場合は覚えておいて損はないと思います。

懲戒に関する規定

最後は、これまでとは少しタイプが違います。懲戒や罰則に関する規定という、ご自身が会社に対して守らないといけない事項になります。

社員は会社から給与を受け取る対価として、会社の業務指示に従い、会社に損失を与えないように行動することが求められます。この損失とは、これは必ずしも金銭的な評価ができるものに限りません。会社という集団生活を乱すような場合も含まれます。

会社が業務指示に従っていないと判断する場合や、会社に損失を与えたと判断する場合には、会社は該当する社員に処罰を与えることがあります。処罰を与える権限を会社に与えるための根拠が、就業規則の中の懲戒規定や罰則規定になります。

懲戒処分の中には、軽い方から順番に、戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇などがあります。より細かく規定していたり、言葉が違ったりすることはあるかと思います。一口に懲戒処分といっても、いろいろな種類があるのだということを知っておいてください。会社は、事前に就業規則に定めて社員に周知徹底していない種類の処分をすることはできません。

また、懲戒事由として懲戒処分の対象となる行為についても、就業規則には規定されています。懲戒事由に該当する行為が行われた場合、定められている懲戒処分の中のいずれかの処分をされることがある、ということになります。

どちらかの規定が欠けている場合、懲戒処分を有効に行うことは難しいことになります。また、懲戒処分と言っても、いきなり誰でも彼でも懲戒解雇にすることはできません。初めての行為なのか、どの程度の問題を発生させる行為だったのか、ということを慎重に判断して、重すぎる処分にならないように、適切な処分を選択しなければいけません。会社は対象となる社員に対して、対象者ごとに恣意的に処罰を重くすることは許されていません。

思ってもみないことで処罰されないように、どういった行為を禁止しているかはきちんと把握しておきましょう。とは言っても、くれぐれも「この行為は規定されていないから、悪いことだと思うけどやってしまえ!」などという、逆の判断には使わないでください。「その他これに準ずる行為」のような懲戒事由を定めている会社が多いですから、慎重に行動することが必要です。

昨今はSNSが普及して、軽い気持ちでご自身の業務中のできごとや、職務中に撮影した写真をSNSにアップしてしまうことがあるかと思いますが、こういった行為が会社の業務指示違反や会社に損失を与える行為と判断される可能性は高いです。これの非常に悪質なものとしてバイトテロと呼ばれる様な、バイト中の本人たちにとっては悪戯のつもりの動画などがニュースになっていることがあります。刑事事件に発展したり、高額の民事訴訟に発展したりすることがあります。

会社によっては、SNSに関する特別な規定を設けている会社もあります。あとから知らなかったといっても、それで許してくれる会社は殆どないでしょうから、SNSとの付き合い方は特に注意が必要になるでしょう。


特に注意して確認しておいていただきたい就業規則について解説してきました。一つ一つの項目で、1回のコラムにしてもいいほどお伝えしたいことが多い内容なのですが、今回はざっくりとまとめてみました。

これを機会に、ぜひ就業規則に目を通してみてはどうでしょうか。もしかして、何処にあるのかわからない、なんていう衝撃的な事実に気付くかもしれませんよ。

© 株式会社マネーフォワード