「緑が茂り 花が咲く平和を…」G7首脳が平和公園に植樹 その桜は “被爆樹木” … 樹木医の想い

G7広島サミットで、首脳たちは平和公園を訪れた際に桜を「植樹」をしていますが、これは原爆を耐え抜いた被爆桜から挿し木して育てたものです。物言わぬ証人「被爆樹木」を守り続け、今回、植樹に使われた木を育てた樹木医に聞きました。

1992年に樹木医となり、被爆樹木を守ったり、苗木を育成したりする活動を続けている 堀口力 さんです。ちょうど桜が咲く時期にうかがいました。

樹木医 堀口力 さん
― 予定は、これなんですね。
「全部、花が咲いた状態ではないですが…」

― 6~7輪咲いている感じですか。
「そうですね。ふつうの桜でしたら素直にといいますか、すーっと伸びてくれる予定なんですが、やっぱりちょっと曲がりくねるといいますか、これもその(被爆の)影響が出てるんかなと」

― そこを何とか補正しようと?
「そうなんです。曲がった状態で記念植樹するのはいかがかと思って、添え木をして、とりあえず、真っすぐにしている」

小林康秀 キャスター
「今回、植樹されたもととなる木は、広島市役所の中にある被爆植樹です」

1945年8月6日に投下された原子爆弾に耐えたソメイヨシノです。広島市役所の建て替えのため一時的に移転しましたが、現在も3本の被爆桜が植えられていて、ことしも桜の季節に花を咲かせていました。

樹木医 堀口力 さん
「(爆心地から)1.2キロくらいの場所なんですが、それを接いだんですけど」

土台となるオオシマザクラの苗木に被爆桜の枝を接ぎ木したものです。ふつうの木は、7割から8割は新たな芽が出るそうですが…

堀口力 さん
「この被爆樹木については半分を切りますね。4割くらいかな。3割から4割程度しか次の芽が出てきません」

去年の10月にサミットの関係者が訪れて、被爆樹木の植樹を相談され、堀口さんから桜を提案したそうです。

堀口力 さん
「桜については日本人として戦争中はいろいろと戦争と結びついてというイメージもありますけれども、やはり今からは桜の花が咲いた平和といいますか、それを発信するにはやっぱり日本を代表する花の1つですね」

樹木医の堀口さんは、「原爆を耐えて生き残った木だから、植樹した木も強いはずで、首脳にもそのことを知ってほしい」と話します。

樹木医 堀口力 さん
「ウクライナの戦争の映像を見ても、非常に悲惨な状態ですよね。やはり緑がある程度、茂る場所というのは、その状態だけでも平和というか。そのうえに桜の花が咲いてくれれば、それ以上のものはないとそんな感じがしますけどね」

そして、サミット初日―。平和公園を訪れて、原爆慰霊碑に献花を終えた首脳たちは、そのまま平和公園西側の植樹スペースへ。真っ直ぐに伸びた被爆桜に、首脳が代わる代わる土を入れていきました。

堀口さんは、10メートルほど離れた場所でその様子を見守りました。

樹木医 堀口力 さん
「77年間、平和を見続けた被爆樹木が植えられるということは、非常に意味のある感動的な状況でしたですね。これを契機に世界が平和な状態を作ってもらうのを団結してやってもらいたいっていう感じですね」

今は柵に囲まれ、多くの人が通りがかりにその姿をカメラに収めています。

堀口力 さん
「徐々に、これは世界の方にもこの被爆樹木の存在を知ってもらえるんかなという思いがあります」

◇ ◇ ◇

青山高治 キャスター
本当にこの木がどういう木なのか、被爆樹木とはどういうものなのか、本当に世界の人に知ってほしいと思いますし、実際、今、外国人観光客に日本の桜は大人気で、そう考えると、堀口さんの提案によって被爆樹木の中から桜が選ばれたってのも本当によかったなとあらためて思います。

中根夕希 キャスター
堀口さんの言葉の中で「花が咲いた平和」というのが、とても印象的でした。首脳のみなさんがどのような思いで植樹をされたのかなと思いつつも、大きく咲き誇ってほしいです。

小林康秀 キャスター
前の広島市役所の庁舎のときには中庭に咲いていた桜は、今は建て替わって西側に植え替えられているんです。今回、接ぎ木されたものが植樹されたということなんですね。

それ以外にも今回、被爆樹木の取り組みがあります。広島東南ロータリークラブは被爆樹木にプレートを付ける活動をされていらっしゃるんですが、平和大通りの白神社の前にあるムクノキ。なかなか育てるのが難しいということで伐採しました。というわけで、こういった板に変わったんですけれども、これを何かに変えられないかということで、今回、サミット主会場のグランドプリンスホテル広島で各首脳、特にアウトリーチの国々を出迎えるときにこういったモニュメントがありました。そのときの「G7」の文字やプレートにその被爆樹木が使われていたんです。ね。さまざまな面でみなさんにこの被爆樹木の存在を知ってほしいということです。

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