6月開幕の新公式戦「達人戦」に期待 藤井六冠の最年少名人記録更新は? 谷川十七世名人と井上九段がトーク

谷川浩司十七世名人=21日、大阪市北区、MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店

 将棋の谷川浩司十七世名人(61)=神戸市=と井上慶太九段(59)=兵庫県加古川市=によるトークイベントが21日、大阪市北区の書店で行われた。現在開催中の第81期名人戦7番勝負や6月に開幕する新しい公式戦「達人戦」などが話題に上り、ざっくばらんに思いを明かし合った。

 谷川十七世名人が今年1月に「藤井聡太はどこまで強くなるのか 名人への道」(講談社+α新書)を出版したことを記念して開かれたイベント。

 谷川十七世名人は、自身と羽生善治九段(52)、藤井聡太六冠(20)の共通点として、順位戦A級1期目を7勝2敗で終えた後、プレーオフで勝利して名人挑戦者になったことを挙げた。

 このうち谷川十七世名人、羽生九段の2人は、7番勝負で3連勝2連敗となった後で1勝を返し、4勝2敗で名人を奪取した。今期、藤井六冠の最年少名人記録更新記録に注目が集まるが、谷川十七世名人は渡辺明名人(39)の心境について「アウェーな雰囲気の中、第3局で1勝を返して踏みとどまったのが精神力の強さだと思います」と思いを寄せた。

 谷川十七世名人はさらに、羽生善治九段と数々のタイトル戦で対戦した際の心境を吐露。「30代前半のころは終盤に自信があり、ほかの人との対局では形勢互角で終盤になれば勝つ自信があったが、羽生さんと対局するときは自信を持てず、見えない壁におびえて自滅することがけっこうあった」と振り返った。

 一方、井上九段は福岡県飯塚市で21、22日に開かれた第4局の前夜祭に参加した際の印象として「私たちが若い頃は将棋のイベントに参加するのはほとんど男性ばかりだったが、女性が多くなっていて驚いた」とファン層の広がりと変化に言及した。

 達人戦は6月に開幕する公式戦で、50歳以上の現役棋士が出場する。井上九段は「おっちゃんに夢を見させてもらえる素晴らしい棋戦ができた」と場を和ませ、谷川十七世名人は、羽生九段との通算対局数が、中原誠十六世名人-米長邦雄永世棋聖の187局に次ぐ167局となっていることなどを念頭に、羽生九段との対局実現に期待を寄せた。(井原尚基)

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