病院・高齢者施設のエアロゾル感染対策、9割が換気に問題 「5類になったとはいえ…」

換気口に風量計を当てて風量を測定する京都府の職員(2022年10月、長岡京市)

 京都府が新型コロナウイルスなど空気中を漂う微小な粒子「エアロゾル」の感染防止策を探るため、府内の医療機関や高齢者施設など57施設で調査した結果、約9割で換気不足の課題が見つかった。換気装置の掃除が不十分なことが主な要因で、府はガイドブックを作成して「正しい換気」ができていない可能性を伝え、施設内でのクラスター(感染者集団)の発生防止につなげる。

 エアロゾル感染は空中を漂うウイルスを含む微粒子を吸い込むことで起こり、コロナの感染経路の一つとされる。接触、飛沫(ひまつ)感染に比べて正しい予防法が知られていないため、府は昨年4月~今年2月に府内の医療機関や高齢者施設など57カ所の634室で空気の流れや換気量などを調査していた。

 この結果、エアロゾル感染の対策で重要な換気について、57カ所のうち51カ所で304件の課題が見つかり、うち68%が換気装置の不備(掃除不足、スイッチの入れ忘れなど)だった。特に屋外の排気口は詰まったまま放置されがちで、掃除後に換気量が16倍になった事例もあるという。

 ガイドブックでは、複数の種類がある換気口の写真を掲載して汚れのチェックを促すほか、窓の開放による「自然換気」についてもカーテンが網戸に吸い付いていれば効果が薄くなるため、クリップでまくり上げるといった有効な方法を紹介した。換気の目安とするため、二酸化炭素濃度の測定を勧めるとともに、センサーはエアコンや加湿器から離して設置するように促すなど注意点も併記した。改善策を図った施設の事例集も掲載している。

 監修した府保健環境研究所の藤田直久所長は「新型コロナが感染症法の5類になったとはいえ、医療施設や介護施設などで注意が必要なことは変わらない。換気したと思い込んでいるだけではないかどうか、チェックしてほしい」と話している。

 ガイドブックは医療施設版と高齢者・障害者・障害児施設版で事例集の内容を変え、各施設に配布している。それぞれA4判32ページ。府のホームページにも掲載し、解説動画も用意している。

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