拉致被害者家族「残された時間ない」有本さん父ら800人、早期の全員帰国を訴え 東京で大規模集会

集会終盤のシュプレヒコールで拳を突き上げる有本明弘さん=東京都千代田区

 北朝鮮による拉致被害者の家族は27日、東京都内で恒例の国民大集会を開き、早期の問題解決を訴えた。神戸市出身の被害者、有本恵子さん=失踪当時(23)=の父明弘さん(94)ら約800人が出席。被害者を待つ家族の高齢化が進む中、「残された時間はない。親世代が元気なうちに全員帰国を」と呼びかけた。

 家族会は2月、親世代が元気なうちに全被害者を一括帰国させれば、北朝鮮への人道支援に反対しないという新しい方針を発表。5月上旬には訪米し、米政府などに支援を求めた。

 また、5月21日に閉幕した先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の首脳声明には、北朝鮮に拉致問題の早期解決を求めることも盛り込まれた。

 家族会代表で、横田めぐみさん=同(13)=の弟拓也さん(54)は金正恩・朝鮮労働党総書記と娘の映像に触れ「子供を愛する気持ちがあるなら、日本で親世代が待っていることを忘れないでほしい」と力を込め、「岸田文雄首相の強いリーダーシップに懸けている」と強調。体調が優れない中で出席した母の早紀江さん(87)も、日朝首脳会談の開催を強く求めた。

 出席した岸田首相は「時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人権問題」と述べ、「トップ同士の関係を構築することが重要。条件を付けずに金正恩氏と向き合う」と、決意を示した。

 集会の後、取材に応じた有本さんは「政府は言うだけでなく行動を。もっと強気に対応してほしい」と語った。(末永陽子)

© 株式会社神戸新聞社