G7サミットに評価と懸念 平和宣言起草委員会 核被害の実相強調を

G7広島サミットやロシアのウクライナ侵攻などについて、意見を出し合った平和宣言文起草委員会=長崎市平野町、長崎原爆資料館

 長崎市の平和祈念式典(8月9日)で鈴木史朗市長が読み上げる平和宣言文の起草委員会は27日、市内で初会合を開いた。世界情勢が不安定化し核抑止論を肯定する風潮も強まる中、あらためて核被害の実相を強調するよう求める意見が相次いだ。被爆地広島で初めて開催された先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)には評価の一方、核軍縮や廃絶への具体策が示されなかったことなどに懸念の声も上がった。
 サミットでは首脳らが原爆資料館を訪問するなどした一方、核軍縮に焦点を当てた文書「広島ビジョン」で核抑止論を正当化した。 長崎平和推進協会理事長の調漸委員は「賛否はあるが一つの到達点としては評価する。平和宣言は今後の(核廃絶への)大きな展開を後押しする宣言であってほしい」と述べた。被爆者の朝長万左男委員は、G7がウクライナ侵攻を続けるロシアとの対立を深めていることを踏まえ「宣言では、安全保障における東西の対立を根源的に解決するよう要望しなければ。核軍拡へ逆行する危険をはらんでいる」と指摘した。
 核軍縮・不拡散に詳しい梅林宏道委員は、ウクライナでの戦争や北朝鮮の核・ミサイル開発などを受けて「核兵器を使う、頼ることをタブー視する風潮が弱まってきている」と危惧。核被害の実相が世界に十分伝わっていないとして「人々のむごい生き死にや、生涯続く放射能被害について、例年よりも行数を割く必要がある」と提言した。
 4月の市長就任後、初めて平和祈念式典に臨む鈴木市長は「核兵器が実際に使われると人類にどんなことが起きるか、人間の視点からしっかり発信する」と強調。「被爆の実相を当事者意識を持って感じ、自分事として捉えてもらうことが重要」との認識を示した。
 このほか、日本政府に核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加や、被爆体験者救済などを訴えるよう求める声も複数上がった。委員は被爆者や有識者ら15人。市は6月の次回会合で素案を示し、7月末にも取りまとめる。

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