サイバー犯罪監視 長崎県警が大学生と連携 専門学ぶ33人「テクニカルボランティア」に委嘱

「サイバーテクニカルボランティア」に委嘱された学生=長崎市尾上町、県警本部

 増加するサイバー犯罪の被害を食い止めるため、県警は本年度から、長崎県内で情報通信技術を学ぶ大学生の“目”を借り、サイバー空間のパトロールを強化する。参加する学生は「身近なところに危険が潜んでいることを同世代に伝えていきたい」と意気込む。
 「全く関係ないワードで検索しても闇バイトや薬物関連が出てきてしまう。だから誰でも目にする可能性があると思います」
 そう指摘するのは、県立大地域創生研究科情報セキュリティコースの林壱成さん(23)。大学の一室でパソコンを開き、ツイッターの検索欄に試しに打ち込んだワードは「長崎」「セキュリティ」。関連は不明だが、数ある書き込みの中に薬物売買を示唆する内容が紛れ込んでいた。
 「闇バイト」で検索すると、関連サイトに引き込もうとする書き込みがずらりと並んだ。「U」(受け子)「D」(出し子)など隠語も表示。林さんは県警の指示通り、違法有害情報を監視する民間団体「インターネット・ホットラインセンター」にサイトのURLを通報した。

 県警は今月23日、長崎大、県立大、長崎総合科学大で情報セキュリティーなどを専攻する学生計33人を「サイバーテクニカルボランティア」に委嘱した。同日、サイバー犯罪対策課員が座学で闇バイトの手口や危険性を説明。今後、学生にはパソコンやスマートフォンを使ってのパトロールに協力してもらうほか、不正アクセスのログ解析など模擬捜査演習を実施し、人材育成・確保にもつなげたい考えだ。
 長崎大副学長(情報担当)でICT基盤センターの柴田裕一郎センター長は、県警との連携について、学生が専門技術を生かし社会貢献をするだけでなく、サイバー犯罪の捜査手順を学ぶことができ、「キャリアパスが多様であると知る機会になる」と期待。将来的にはサイバーパトロールを効率化するソフトウエアの開発など共同研究にも取り組んでいきたいとしている。
 同課によると、2022年の県内のサイバー犯罪に関する相談は3394件(前年比111件増)で、県警に寄せられた相談全体の約15%を占める。摘発数は126件(同66件増)、93人(同46人増)。最も多かったのは、ニセ電話詐欺や闇バイトを含むインターネットを使った詐欺(50件・42人摘発)だった。
 同課は「『短時間』『高収入』などの甘い言葉につられてバイトに応募し、個人情報を取られてしまうと抜け出せなくなる。安易に手を出さないで」と呼びかけている。

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