社説:遮断機のない踏切 京滋でも事故対策の強化を

 命に関わる事故を防ぐため、「遮断機・警報機のない踏切」の廃止や安全対策を加速させねばならない。

 舞鶴市の京都丹後鉄道の踏切で先月、シニアカー(ハンドル型電動車いす)の高齢男性が列車にはねられ亡くなった。3月には香川県まんのう町の高松琴平電気鉄道の踏切でも徒歩の高齢女性がはねられるなど、列車の接近に気付かなかったとみられる事故が後を絶たない。

 遮断機・警報機のない踏切は「第4種踏切」と呼ばれ、2019年末時点で2603カ所、うち京都府に21、滋賀県に35ある。もともとは改築を前提に過渡的に作られた踏切で、1960年時点の約6万カ所から大きく減ったものの、ここ10年以上も足踏みが続く。国は廃止か遮断機・警報機の設置を鉄道事業者に求めているが、今も踏切総数の8%を第4種が占める。

 減少ペースが鈍い理由として関係者が挙げるのが、地元の合意形成の難しさと、遮断機の設置にかかるコストである。

 第4種踏切の多くは住民の生活道路にあり、廃止されれば自宅や農地などへの出入りが不便になるケースが少なくない。迂回(うかい)路が近くにない地域では切実な問題だ。

 ただ総務省の調査報告(21年11月)によれば、利用が減って廃止しても支障がないと住民が考えているにもかかわらず、鉄道事業者がそうした状況をつかんでいない例や、事故がない以上は廃止困難と認識している例があったという。

 事業者は、通行量やニーズの変化をしっかり把握することが欠かせない。必要性の乏しい箇所については、地元自治体や住民も交えて早期に廃止の協議を始めるべきではないか。

 遮断機・警報機の設置コストは1千万円超とされ、維持費を含め地方の中小鉄道には少なからぬ負担になる。里道や農道の踏切には、行政の補助金が交付されにくい現状もある。

 とはいえ、遮断機を付けるまでの間でも他の安全対策を講じられるはすだ。舞鶴の事故現場では踏切脇の地面が盛り上がっており、シニアカーに座った男性から列車の接近が見えなかった可能性が指摘されている。

 踏切周辺の見通しをよくしたり、手前で左右の確認を促す仕掛けを設けたりするなど現場に合った対策を急ぎたい。リスク要因を見逃さないよう、障害者や子どもの視点も取り入れる必要があろう。

 国は、駅のバリアフリー化では費用の3分の2超を自治体とともに補助している。運賃に上乗せする形で乗客に負担を求める制度も新たに導入した。

 第4種踏切の解消についても、支援の強化を検討すべきではないか。鉄道事業者が地元協議や工事を円滑に進めるために、国と自治体は一歩踏み込んでほしい。

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