「重要な宿題残した」激動の3日間 広島サミットの評価を共同通信・太田編集委員に聞く

G7広島サミットが閉幕して1週間が過ぎました。7か国の首脳だけでなく、ウクライナのゼレンスキー大統領の参加など、激動の3日間でした。広島が求めてきた思いにどこまで応えたといえるのか…。そして、今後の注目点について聞きました。

岸田文雄 総理
「G7として初めての核軍縮に焦点を当てた核軍縮に関するG7首脳『広島ビジョン』を発出することができました」

岸田総理が、「歴史的な意義を感じる」と強調したG7広島サミット―。その評価について、RCCの特別番組に出演した共同通信の 太田昌克 編集委員は、こうみています。

共同通信 太田昌克 編集委員
「G7の首脳が原爆資料館、非常に短い時間、しかも本館に少なくともアメリカ・バイデン大統領が行ったことが確認されていませんので、被爆地のみなさんにとっては、いささか不満が残るというのはよく分かります。それでもG7首脳、それから戦争の当事者であるウクライナ・ゼレンスキー大統領が、核の威嚇を肌身に感じていらっしゃる首脳が広島に行って、核の脅威、核の非人道的な帰結、非常に未曾有の人間的悲惨さを体感されたということは、大切な一歩かと評価したいと思います」

資料館を訪れた首脳は、芳名録に記帳しました。

共同通信 太田昌克 編集委員
「スナク・イギリス首相の言葉が非常に印象的だったんですけれども、スナク首相は、こう言っているんですね。『シェークスピアは悲しみを言葉に出せと説いている。しかし、原爆の閃光に照らされ、言葉は通じない』」。

「言葉は通じないんだと。原爆の業火で、一瞬に我が身が焼き尽くされる。我が身に何が起こったかもわからない。ましてや臨終の時を知らぬまま亡くなっていった多くの被爆者、その死者の無念とか苦しみ・悔しさ、言葉にもできないというところをスナク首相、感じ取るところが、やっぱりあったんだと思います。イギリスは、核のボタンを持っている国の1つです。やはり核を操るということは、とんでもないことなんだ。恐ろしいことなんだ。ましてや、これに指をかけるということはあってはならないんだ。そういう核に対する『畏怖の念』を、スナク首相は感じ取られたんじゃないかと思います」

首脳が触れた被爆の実相―。その一方で…

被爆者 サーロー節子さん(91)
「わたしは(首脳が)広島まで来て、これだけしか書けないのかと思うと、胸がつぶれるような思いがしました」

サミットで首脳が発出した「広島ビジョン」については、核廃絶や核兵器禁止条約への言及がなかったことに落胆の声が聞かれました。

共同通信 太田昌克 編集委員
「気になったのは、サミットの前日に行われた日米首脳会談で、ここでアメリカが核を含む、あらゆる能力を使って日本の防衛を安保条約に基づいてコミットするのだ、約束するのだ、という言い方をしているんですが、この首脳会談が行われたのは、島外科上空の爆心地からわずか歩いて数百メートル、数分のところで首脳会談が開かれて、『核の傘』の堅持・強化で一致をしているんですね。はたして広島から出すメッセージとして適切だったのかどうか」

広島から出された『核の傘』堅持・強化のメッセージ。

共同通信 太田昌克 編集委員
「もう少しクリアな形で核廃絶を両首脳が目指していくのだと。そのうえで、抑止力は重要だけども、この核の傘というのは決して未来永劫、持続可能性のあるものではないんだと。危険があるんだと。もしも間違った場合、人間ですから間違うわけですね、核が使われてしまう恐れが十分ある。そこをやっぱり脱却していくんだというふうな方向性、議論の進め方。それをやはり広島から多くの被爆者のみなさん、日本国民のみなさん、聞きたかったんじゃないかと思うんですね。脱核抑止、そこへ向けて、これから努力していくんだというメッセージが出なかったことは、わたしは被爆地でやったサミットとしては不十分だったんじゃないか、非常に重要な宿題を残したまま、今回のサミットが終わってしまったというふうに思っています」

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