佐世保市の道路で広がる「ゾーン30プラス」 速度規制や「狭窄」設置で安全確保 課題はマナーや認知向上

住宅街に整備された狭さく=佐世保市大塔町(画像の一部を加工しています)

 生活道路や通学路などの安全確保を目的に、エリア内の最高速度を30キロに規制する国の施策「ゾーン30」。約10年前から全国的に展開されているが、さらに安全性を向上させるための対策を取り入れた「ゾーン30プラス」の整備が県内でも始まっている。そのうちの一つ長崎県佐世保市の卸本町・大塔町にまたがる住宅街では長年、車両の大通りなどへの通り抜けなどが課題となっていた。整備に至った経緯や効果、今も残る課題を探った。
 4月末、ゾーン30プラスが整備された住宅街に足を運んだ。公園沿いのポストコーンで車道の幅を狭くする「狭窄(きょうさく)」を設けた道路に差しかかると、大半の車両は速度を下げて通過していった。付近の男性住民は「(整備によって)前よりもドライバーが注意して走行するようになった」と印象を口にした。
 数百世帯が暮らすこの住宅街では以前から車両の通り抜けが多く、住民から危険性や対策を訴える声が出ていた。しかもエリア内は速度規制がなく、「法定速度(60キロ)」(県警交通規制課)で通行できる状態だった。
 長年、地域の安全に目を配ってきた日宇地区自治協議会地域安全部会長の木下正之さん(68)は「速度規制がないと知り、なおさら危ないと思った。(大きな人身事故が)起きてからでは遅い」と危機感を強め、安全性の確保に向け尽力してきた。
 そこで今年3月に整備されたのがゾーン30プラス。国の施策で、各自治体がエリアを検討して整備していく。卸本町・大塔町エリアでは狭窄とゾーン30を組み合わせ、車両の速度抑制などを図る仕組みだ。狭窄のほかに、路面をなめらかに盛り上げた「ハンプ」などを設ける手段もある。
 県内では同市浜田町など3町にまたがるエリアもゾーン30プラスに整備された。ハンプと横断歩道を組み合わせた「スムーズ横断歩道」になっている。
 こうした整備の「効果」を評価する声がある一方、卸本町・大塔町エリアでは課題を指摘する意見も出ている。狭窄の通過後に加速したり、減速せずに通過したりする車両の姿が今もみられるからだ。ある住民は「(整備しても)最後はドライバーのマナー次第」と漏らす。
 エリアの複数の出入り口にはゾーン30プラスの標示がある。しかし、木下さんはエリアの認知度向上を図るため「エリア内にも標示などを増やしてほしい」と語る。

「ゾーン30プラス」整備計画(佐世保市 卸本町・大塔町)
「ゾーン30プラス」整備計画(佐世保市 浜田町など3町)

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