「見た目は同じでも」「見えない壁」 中国残留日本人2世の心情 CD制作し合唱練習

歌を収録したCDを持つ宮崎会長(左)と園田さん

 中国残留日本人の子として長く日本に暮らしながら、言葉や就労などに多くの困難を抱える「2世」の心情を表現した歌が完成した。「顔や見た目は同じでも」「見えない壁に隔てられ」-。日中のはざまで生きる苦悩と共に、それを乗り越えようとする希望も込められ、長崎県内の2世たちが合唱の練習に取り組んでいる。
 中国残留日本人は、第2次世界大戦中に中国北東部(旧満州)に暮らし、終戦後も中国に残された人たち。2世は親とともに、または親の帰国後に日本に来ている。日本に移り住んだときには30代以上の人が多く、日本語を習得できないまま日常生活に支障を来したり、生活保護を受給したりするケースも多い。県内の2世157人は「県中国帰国者二世の会」を組織している。
 完成した歌のタイトルは「それが私の願い~私たちも日本人~」。長崎市のシンガー・ソングライター園田鉄美さん(71)が、県内の2世を支援する日中友好協会県連の依頼を受けて制作した。園田さんは2世の手記を読んだり体験を直接聞いたりして、言葉が通じない苦しみや、家族と支え合って生きる希望を歌詞に込めた。
 「桜咲くこの町で 共に暮らしていける それが私の願い」。最後はそう締めくくっている。

作詞作曲した園田さん(右から3人目)のギターに合わせて歌う中国残留日本人2世ら=長崎市役所

 「二世の会」の8人や園田さんらが26日、長崎市役所で会見を開き、歌の完成を報告。同会の宮崎一也会長(69)は「帰国して30年(近く)の月日がたち、社会に溶け込むように頑張ってきた。今は高齢者になったが、まだ日本語がうまく話せない」と吐露した。完成した歌について「とても美しい歌。私たち2世の気持ちを完璧に表している」と笑顔を見せ、園田さんのギターに合わせて2世全員で歌い上げた。
 2世たちは自らの現状を知ってもらおうと、合唱祭などへの出演も希望している。同県連は歌を収録したCDも制作した。問い合わせは植田亘一副会長(電090.8220.4702)へ。

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