「平和への誓い」被爆者代表に熊本在住・工藤さん 紙芝居で核廃絶訴え 8月9日長崎平和祈念式典

工藤武子さん(長崎市提供)

 長崎県長崎市は31日、8月9日の平和祈念式典で「平和への誓い」を読み上げる代表者に、長崎原爆の被爆者で熊本市在住の工藤武子さん(85)を選んだと発表した。工藤さんは被爆した家族を相次いで亡くした経験があり、現在は紙芝居を使った語り部活動に取り組んでいる。「核兵器は人間を生涯苦しめる非人道的な兵器だと、体験した私が伝えたい」と決意を語った。
 工藤さんは7歳の時、爆心地から3キロ地点の長崎市片淵町2丁目(当時)にあった自宅で被爆。強烈な閃光(せんこう)を感じて母やきょうだいと防空壕(ごう)に逃げ込み、大きなけがはなかった。だが被爆の数年後から、爆心地近くで親族の遺体を埋葬した父親をはじめ、母やきょうだいが次々とがんを患って亡くなり、3年前には自身の肺がんも発覚した。
 現在は熊本県原爆被害者団体協議会の理事。熊本の被爆2世と共に、爆心地に向かう救援列車をテーマにした紙芝居を作り、学校や公民館での読み聞かせを続けている。自身の被爆体験講話を含め20回以上取り組んできた。
 平和への誓いの代表者公募は2017年に始まり、今年は長崎県内外の7人(男性5、女性2)が応募。選定審査会(調漸会長ら5人)が書類やスピーチ映像を見て、最終的に全会一致で工藤さんに決めた。
 31日会見した調会長は、選定理由の一つを「紙芝居による平和学習など若い世代へのアプローチも豊富で、若者と共同で核兵器廃絶をつないでいく発想を持っている」と説明した。工藤さんは17年から毎年応募。長崎県外在住者が選ばれるのは18年以来2人目となる。
 工藤さんは報道陣の電話取材に応じ「選ばれて光栄だが、緊迫した国際情勢の中で核兵器廃絶を言うのは責任重大。武力によらない平和をつくるよう、各国が協力してほしいと伝えたい」と語った。

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