え?6月1日なのにもう内定?? 新卒採用活動が解禁 「ルール通り開始だと良い人材の獲得困難」早期化止まらず

2024年春の新卒者を対象に開かれた合同企業説明会=23年3月、豊岡市内

 2024年春卒業予定の大学生らを対象とする企業の採用選考活動が1日、解禁された。解禁日は政府から経済界への要請に基づくが、人口減少で学生が構造的に足りない「売り手市場」を背景に形骸化している。兵庫県内でも大手を中心に多くの企業が既に内定・内々定を出しており、採用活動の前倒しに歯止めがかからない。(西井由比子、塩津あかね、赤松沙和)

 1日、選考解禁日にもかかわらず、県内に本社を置く産業機器製造大手に向かう学生らの姿はなかった。面接は全てオンラインとしたことに加え、既に一部の学生に内定が出ていた。

 「ルール通りに解禁日からスタートしていては、良い人材の獲得は難しい」と担当者。採用活動は昨年より前倒しで進めてきたといい、新型コロナウイルス禍で停止していた先輩社員との交流や工場見学なども再開。ミスマッチの少ない採用に努める。

 

■7割は就職内定

 リクルートが4月に発表した24年卒予定の求人総数は、推計で前年比9.3%増の77万2900人。2年連続で増加しており、大卒求人倍率は、1.5倍だった21~23年卒から上向き、1.71倍に達した。

 旺盛な採用意欲を反映し、同社の調査では、5月中旬時点の就職内定率は72.1%と、就職活動が現行日程になった17年卒以降、最高のペースで推移。コロナ禍で導入されたオンライン面接や、対面と組み合わせる「ハイブリッド型」面接の定着も、効率の良さから活動の早期化を後押ししているとみられる。

 

■早くても遅くても…

 中小企業も動きを加速させている。兵庫県中小企業家同友会(神戸市中央区)は、3月に開いた合同企業説明会に参加した会員企業40社を調査。5月下旬時点で既に4割程度が内定、内々定を出しているという。

 同会の担当者は「大手の動向に合わせ、採用活動は年々早まっている。学生の売り手市場で、内定を出しても来てくれるとは限らず、人数の確保には急がざるを得ない」と打ち明ける。

 コロナ禍からの回復を急ぐ県内拠点の飲食チェーンも、ハイブリッド型で面接を進める。担当者は「採用のスケジュールは、大手、中小企業がどうというより、全体の流れで決めている。全体で見たときに、早くても遅くても、うまく人材を獲得できない」と話す。

 

■活動長期化の懸念も

 企業側の動きに、大学側からは懸念の声も上がる。甲南大学キャリアセンター(同市東灘区)によると、採用活動は毎年2週間ずつ早まってきているという。前年秋のインターンシップ(就業体験)の段階で面接を実施している企業もあるといい「インターンシップを含めると、企業の採用活動は長引く傾向にある」と話す。

 さらに今年は、採用意欲の高まりから「求人がいつまでもあり、就職活動が続く状態が想定される」として、学業への影響に警戒を強めている。

【大学生の就職活動】国内企業の多くが、大学生に卒業と同時に入社を求める新卒一括採用を行う。政府は学業への影響に配慮し、会社説明会を前年の3月、面接などの選考活動を6月、内定を10月に解禁するルールを定めている。かつては経団連が指針で日程順守を求めたが、2021年卒から政府が要請する形に転換した。ただ、違反企業への罰則はない。既卒者や留学経験者が試験を受けやすい通年採用も増えている。

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