ウクライナ出身のプロダンサー2人、避難先の神戸にバレエ教室 支援受け練習場所を確保「一歩ずつ前向く」

周囲への感謝を何度も口にするヴィクトリア・コスティウチェンコさん(左)とボグダン・チャバニュクさん=神戸市中央区八幡通2

 戦禍のウクライナから神戸市内に避難しているプロバレエダンサー2人が、神戸・旧居留地発祥で関西最古のスポーツクラブ「神戸レガッタ・アンド・アスレチック倶楽部(くらぶ)(KR&AC)」(同市中央区八幡通2)内に、バレエや社交ダンスを教える教室を開校した。記念式典で2人は「1年前に避難してきた時は想像もできなかった。一歩ずつ着実に、きょうから頑張りたい」と喜びを語った。(名倉あかり)

■5月に開校式典

 教室「Just Dance(ジャスト・ダンス)」を開いたのは、同国南部オデッサにあるバレエ団出身のヴィクトリア・コスティウチェンコさん(35)とパートナーのボグダン・チャバニュクさん(34)。5月25日の開校式典に合わせ、体験に訪れた子ども2人に「上、下、見て」と簡単な日本語や英語を使いながら指導した。

 子どもたちは見よう見まねで脚を伸ばすストレッチや爪先の動きを再現。ヴィクトリアさんから「素晴らしい」と褒められると、笑みがこぼれた。

■娘2人の教育環境確保へ

 ヴィクトリアさんはオデッサ出身で、7歳からバレエを始めた。昨年2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始すると、娘2人の教育環境を確保するため出国を決意。ポーランドなどを経由して同4月下旬、日本にたどり着いた。

 以前から神戸で暮らすウクライナ人の元バレエダンサーに呼ばれてやって来たが、日本語が話せず、仕事を探すのは簡単ではなかった。4カ月ほど前にようやく幼稚園でバレエを教える仕事が見つかり、今年2月には複数回、コンサートに出演。売り上げを母国に残る家族へ送金したという。

 教室の開校は、KR&ACが支援者と共に協力。建物2階の空きスペース約40平方メートルをバレエ教室の練習場所として提供し、神戸ユネスコ協会の寄付で床のシートや練習用のバーも用意した。

 ヴィクトリアさんは「居心地がいい場所」と感謝するが、教室にはまだ全身を映す鏡がない。KR&ACの三木谷研一理事長は「今後は皆さんからの寄付も広く募り、活動を支えていきたい」と話し、運営費に充てるクラウドファンディングも検討しているという。

 現在、ヴィクトリアさんは娘2人と神戸市営住宅で暮らす。連日、戦禍のニュースを目にし、自らの意思で残ると決めた母親や友人の身を案じない日はない。それでも、開校できたことにほっとした表情を見せ「バレエを教えるのは素晴らしい経験になる。安定した仕事と収入が得られるようになれば」と前を向く。

 生徒は未経験の子どもからプロの大人まで幅広く募る。指導料は月4回で1万円。出張指導も行う。KR&ACTEL078.231.2271

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